動産その他の資産に関する法務デューデリジェンスの留意点
M&Aや事業再編、資産流動化などの場面では、動産やその他の資産に関する法務デューデリジェンス(以下「法務DD」)が重要な役割を果たします。本コラムでは、法務DDの目的、対象、作業内容、そして売買契約・リース契約・貸付金・組合出資持分・保険といった個別論点ごとの検討ポイントについて、実務的な観点から整理します。
1 法務デューデリジェンスの目的
- 取引遂行の適正性や障害となる法的問題点の発見
- 企業価値や資産価値に悪影響を及ぼすリスクの把握
- 必要な手続や改善・留意事項の指摘
- 買収後のリスク低減や適正な取引価格の算定
法務DDは、対象資産や会社に法的な瑕疵やリスクがないかを調査し、取引の安全性や合理性を担保することを主な目的とします。特に動産やその他の資産は、権利関係や管理状況が複雑化しやすいため、リスクの早期発見と適切な対応策の検討が不可欠です。
2 対象となる資産の範囲
- 棚卸資産、什器備品、機械設備などの動産
- リース物件やリース契約に基づく資産
- 貸付金や債権
- 組合出資持分などの投資性資産
- 保険契約や保険金請求権
動産は単価が低くても総額で重要性が高い場合があり、またリース物件や貸付金、組合出資持分、保険なども企業価値やリスク評価に直結する場合があるため、注意が必要です。
3 法務デューデリジェンスの作業内容
- 資産の権利関係・帰属状況の確認
- 契約書や関連書類の精査
- 管理・評価・売却・換価方法の検討
- 債権や出資持分の評価・管理・回収体制の確認
- 保険契約の内容・有効性・保険金請求権の調査
これらの作業は、財務DDや事業DDと連携しつつ、法的観点からリスクや問題点を抽出し、必要に応じて契約条件や取引スキームに反映させます。
4 個別論点ごとの検討ポイント
①売買契約に関するポイント
- 動産やその他資産の売買契約では、権利の帰属、移転時期、担保権の有無、契約不適合責任(瑕疵担保責任)などを確認します。
- 棚卸資産の場合、預り在庫や委託品の区別、所有権移転のタイミング、在庫評価の妥当性も重要です。
- 売買契約書の内容を精査し、リスク分担や表明保証条項の有無を確認します。
②リース契約に関するポイント
- リース物件と自社所有物件の峻別、リース契約の内容(所有権移転の有無、リース期間、解約条件、違約金等)を確認します。
- リース契約終了後の所有権帰属や、リース料の滞納・契約違反の有無も調査対象です。
- M&A後にリース契約の解約や条件変更を予定している場合は、中途解約の可否や違約金発生の有無を事前に把握する必要があります。
③貸付金(債権)に関するポイント
- 貸付金や債権の取得時には、客観性・合理性のある評価方法による評価が求められます。
- 債務者の信用力や財務状況を継続的にモニタリングし、債権価値の維持に努める体制が必要です。
- 回収措置(第三者譲渡を含む)の適時性や、担保設定の有無・内容も重要な調査項目です。
④組合出資持分に関するポイント
- 組合出資持分は、組合契約や出資契約の内容、持分の譲渡制限、組合財産の管理・運用状況、損益分配・残余財産分配のルールなどを確認します。
- 組合の財務状況や運営体制、法的な存続性・解散リスクも調査対象となります。
- 出資持分の評価方法や換価可能性、譲渡時の手続・制約も重要な論点です。
⑤保険に関するポイント
- 保険契約の内容(被保険資産、保険金額、免責事項、保険期間、保険金請求権の有無・範囲)を精査します。
- 保険金請求権の帰属や、既存の損害・事故発生時の対応状況も確認します。
- 保険契約が資産価値やリスク管理に与える影響を評価し、必要に応じて追加保険や契約条件の見直しを検討します。
5 動産・その他資産の法務DDにおける共通留意点
- 動産や債権は多種多様であり、種別・特性ごとに管理責任やリスクが異なるため、個別具体的な調査・分析が不可欠です。
- 取得時の評価方法の客観性・合理性、取得後の管理・価値維持、売却・換価方法の適切性を常に意識する必要があります。
- 関連会社が営むべきでない業務を行っていないか、法令や契約上の制約に違反していないかも確認ポイントです。
- 財務DDや事業DDと連携し、法務DDで発見されたリスクが財務やビジネスに与える影響も総合的に検討します。
6 まとめ
動産やその他の資産に関する法務デューデリジェンスは、単なる権利関係の確認にとどまらず、 契約内容や管理体制、リスク管理、価値評価、回収・換価の実現可能性など、多角的な視点からの調査・分析が求められます。売買契約、リース契約、貸付金、組合出資持分、保険といった個別論点ごとに、実務的なリスクや留意点を的確に把握し、取引の安全性と企業価値の最大化を図ることが、法務DDの本質的な役割です。
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景品表示法について
景品表示法のうち、表示に関する規制では、①優良誤認表示と②有利誤認表示が禁止されています。
①優良誤認表示とは、商品・サービスの品質を実際よりも著しく優れていると偽って宣伝する行為を指します。
※優良誤認表示と判断されないためには、事業者が商品・サービスの品質を適切に把握し、正確な宣伝を行うことが重要です。
②有利誤認表示とは、商品・サービスの価格、その他の取引条件を実際よりも著しく有利であると偽って宣伝する行為を指します。
※有利誤認表示と判断されないためには、商品の価格や割引について虚偽の宣伝を行ったり、消費者に誤解されるような表示を行わないことが重要です。
2024年度の処分事例の特徴
2024年度は、全部で20件の処分事例がありました。
2023年度は、いわゆる№1表記の事例が多く見られたのですが、2024年度は、ステマ規制やいわゆる二重価格に関する処分事例が多く見られました。
事務所報Vol.26で記載した居酒屋の税抜表示の事例もありましたが、2024年度はその1件だけで大きなトレンドとはなりませんでした。
また、2024年10月に施行された改正景表法で施行された確約手続きの最初の適用事例もありました。
以下では、処分事例について項目ごとに解説いたします。
ステマ規制について
ステルスマーケティングに関する規制が導入された初めての処分事例が2024年6月6日の医療法人に対する処分事例です。
インフルエンザワクチンの接種のために来院した者に対し、グーグルマップ内のプロフィールの口コミ投稿欄に「★5」「★4」の投稿をするとワクチンの接種費用を割引すると伝え第三者が投稿したものについて、ステマ規制が適用されるとして、処分されました。ステマ規制が適用されると、自社の広告である旨を記載しなければならず、それを怠ったとして処分された事例です。
クリニックに対するクチコミの中で、「グーグルの口コミして内容見せてくれたら更に500円引きと受付入ってすぐ説明され、あぁ星集めしたいのかと納得。」とも書かれており、SNSによる情報拡散の影響を感じさせる事案です。大々的に広告をしていなかったとしても、ネットですぐに情報拡散されることを前提に適切な表示を心がけることの大切さを感じます。
2025年3月18日にも、別の医療法人に対してステマ規制による処分がなされています。その事案は、★5評価をすると5000円分のQUOカードの提供や治療費の割引を案内していたという事案で、ステマ規制に該当し、事業者による広告にあたるとして処分されました。
2025年3月25日には、製薬会社がモニター募集サイトを通じて第三者に商品を無償で提供し、Instagramに指定方針に沿った投稿を依頼し、「“わたしも”使っています」「1日1粒だから続けやすい」「つるんと飲めるソフトカプセル」などの投稿を自社ウェブサイトにも掲載していて処分を受けています。
今回の処分事例で共通しているのは、事業者にとって都合のいい投稿をすることを見返りとしていることであり、投稿を促すだけではステマ規制に違反しない可能性はあります。ただし、事実上良い投稿を強制する場合はステマ規制に該当する可能性もあり、今後の処分事例を十分注視して適正な運用を学ぶ必要が高い領域ともいえます。
追加費用に関する説明不足
追加費用について説明がなされていないことによる処分事例もありました。
2024年5月30日の葬儀会社に対する処分事例では、「直葬」「火葬プラン77000円」などと表示していた事案で、実際には、個室料金や供花、仏具の料金が追加で発生するのに、そのことの表示がなかったとして処分されました。この事案では、実際に提供された実績のない「通常価格」の表示がなされており、いわゆる二重価格の問題でも処分を受けていますが、二重価格表示については後でまとめて説明いたします。
2025年3月21日の処分事例では、「立体マスク30枚3600円(税抜き)「本日の広告の有効期限5日間」などと表示していた事案で、実際には、送料や手数料を負担する必要があったり、広告掲載日から5日間を経過した後も、同じ条件で商品を購入できたことについて処分がなされました。
二重価格表記について
2024年度の処分事例の多数を占めるのがいわゆる二重価格表示です。
「通常価格●●円のところ、本日だけ半額の〇〇円」
と記載しているのに、「通常価格」とされる価格での販売実績がない、または、販売したのがだいぶ前であったという事案です。
上で記載している8週間ルールは、「通常価格」として表示することのできるルールをまとめたものですので、「通常価格」というような表記をする場合には、ぜひとも意識されてください。
資格に関する通信講座を提供する会社が
7/14 13:59まで 最大41%OFF!
夏得キャンペーン
通常価格59,500円 → 41,000円(税込)
などと表示していた事案で、通常価格の実績がないとして「有利誤認」として処分されました。
パソコンの販売に関する事案では、
WEB価格(税込)187,880円
キャンペーン価格(税込)148,425円
21%OFF(10月5日14時まで)
などと表示していた事案で、表示された期限後もキャンペーン価格やさらなる値引き後の価格で購入できたことで処分されています。
「通常価格」の表示に加えて、「期限」を定めている場合には、その期限が守られているかについても確認が必要です。
ネイリスト養成講座の提供を行っている会社が、
今だけ授業料50%割引!!
通常授業料701,800円(税込)
割引額350,900円(税込)
と表示していた事案で、「通常授業料」と称する価格は、最近相当期間にわたって提供された実績のないものであったとして処分されています。
「最近相当期間にわたって」という表示からは、過去のある時点では提供したことがあるのかもしれませんが、8週間ルールに即していなければ、過去に提供したことのある価格でも、比較に使用する「通常価格」として使用することはできませんので、8週間ルールの正しい理解が必要です。
他にも、家具等の販売を行う会社が、
通常価格:¥25190 10%税込
¥18590
などと表記をしていた事案について、ネットに掲載していた53商品について、最近相当期間にわたって通常価格で販売された実績がないとして処分を受けています。
単に、「販売価格1万円」と表示するよりも、「通常価格2万円のところを1万円」とした方が安いという印象を与えることができますし、「1週間限定価格」とすると、さらに急いで買わないといけないという消費者心理を煽ることができますが、そのような表示が適切になされていないと景表法違反に該当する可能性があるという点には十分注意が必要です。
その他の処分事例
その他、表示について合理的な根拠がないとして処分された事例も多数見られました。
香りで花粉をガード
貼るだけで燃費改善
二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。
首にかけるだけで空間のウイルスを除去!
光触媒によりアレル物質を分解
ダニが逃げ出す
たった1プッシュでダニよけ効果約1ケ月
高めの血圧を下げる
中性脂肪を低下させる機能性取得
などといった表示について、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料を求めたところ、いずれも資料が提出されなかった、もしくは、提出された資料が表示の根拠として不十分であるとして処分されています。
中でも、二酸化塩素によるウイルス除去については、
※使用環境によって効果が異なります。
とのいわゆる打消し表示をしていましたが、それによっても、消費者の商品の効果に関する認識を打ち消すものではないと判断されています。
2023年度は、二酸化塩素によるウイルス除去の製品に関する処分事例が相次ぎましたが、2024年度は1件のみとなっています。
また、いわゆる消費税の総額表示に関連する事案として、
生ビール 190円
ハイボール150円
などと、食べログやSNSの投稿に表示していた居酒屋に対して、表示された価格が税込価格として表示されていたにもかかわらず、実際には税抜き価格であったとして、処分がなされました。
消費税の総額表示に関する義務化がされた際に、総額表示を行わないことが有利誤認に該当する可能性が指摘されていましたが、総額表示に関する処分事例としては今回が初めてと思われます。
税込価格が明示されていれば、消費税額や税抜価格を併記することはできますので、表示を行う際には、どのような表示を行うか注意されてください。
電力会社に対する処分事例も複数ありました。
2024年5月28日の処分事例では、
「従量電灯A」よりも1年間で約1200円お得になる新コースです。電気のご利用量が比較的少なく、時間帯を気にせずに電気をご利用になりたいお客様(月平均ご利用電力量400kWh以下)におすすめです。
と表示していた事案で、月平均の使用電力量が400kWh以下の場合でも新コースが従量電灯Aよりも安価にならない場合があるとして処分されました。
また、
電気とガスのセット契約で「おトク」
と表示していた事案で、セット契約すると年間約6000円相当お得になるかのように表示されていたのに、実際には、ポイントサービスに加入して、毎月ログインしたり、毎週配信されるコラムを閲覧するなどしなければ付与されないポイントも含まれていた、としてセット契約のみで記載された金額相当分お得になるものではないとして処分されました。
ガスを提供する会社でも
〇〇ガスの一般料金をご契約中のご家庭で、毎月のガス使用量が16㎥を超える場合は、おトクになります。
と表示をしていたが、実際には、原料費調整単価を合わせると〇〇ガスよりも割高になるとして処分された事例もあります。
確約手続きについて
2024年度は、初めての確約計画の認定も行われました。パーソナルジムが、無料体験当日に入会した場合に限り、通常5万円の入会金が値引きされるように表示をしていたが、実際には期限後も値引きをしている事例があったというものについて、
① 同様の行為を行わない旨を取締役会で決議すること
② 被疑行為の内容について一般消費者に周知徹底すること
③ 被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止す
るための各種措置を講じること
④ 被疑行為を行っていた期間に入会した一般消費者に
対し、支払われた入会金の一部を返金すること
⑤ 前記①から④までの措置の履行状況を消費者庁に報告すること
を条件として確約計画が認定されました。
今後確約手続きを利用する際に参考になる事例です。
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懲戒について
懲戒とは、職場規律・企業秩序を維持するための制度として、服務規律や秩序違反に対する制裁として行われる不利益措置をいいます。
懲戒処分は、企業の秩序維持のための重要な制度である一方で、従業員にとっては多大な不利益を及ぼすものであるため、両者の利益調整が必要で、行き過ぎた懲戒処分については、裁判所が権利の濫用として無効と判断することもあります。そのため、懲戒のルールを理解した上で、実際の裁判例でどのような判断がなされているのかを認識した上で、懲戒権を行使する必要があります。
懲戒の根拠については、学説の争いはありますが、会社が行うべき対応としては、あらかじめ就業規則において懲戒の種類と事由を定めた上で、従業員に周知する必要があります。そのため、就業規則の作成義務がない10人未満の事業所などは注意が必要ですし、就業規則があっても懲戒事由や懲戒の種類が整備されているかについては確認が必要です。多くの企業では、包括条項懲戒事由といって、「その他前各号に準ずる事由があるとき」といった包括的に懲戒事由を規定する条項を設けています。
懲戒の種類
懲戒処分には主に以下のようなものがあります。
戒告 将来を戒めること
けん責 始末書を提出させて将来を戒めること
減給 賃金額から一定額差し引くこと※1
出勤停止 労働者の就労を一定期間禁止すること
降格 役位や職位、職能資格を引き下げること
諭旨解雇 一定期間内に退職願の提出を勧告し、提出が
あれば退職扱い、提出がなければ懲戒解雇と
すること
懲戒解雇 労働契約を一方的に解約すること※2
※1 1回の額は平均賃金の半額まで、総額が一賃金
支払いの総額の10分の1まで
※2 退職金の全部又は一部が支給されない
懲戒のルール
懲戒処分も刑法と同じ罪刑法定主義などが妥当するといわれており、具体的には、以下の点に注意が必要です。
① 就業規則に定めていない事由に懲戒を課したり、
定めのない懲戒処分を課すことができません。
② 就業規則を改訂しても、新たに規定した懲戒事由で
改定前の行為を処分することはできません。
③ 同一の事案について再度の懲戒処分を行うことは
できません。
平等取り扱いの原則
同じ規定に同じ程度に違反した場合には、これに対する懲戒処分は同一種類、同一程度であるべきという原則です。懲戒処分は同様の事例についての先例を踏まえてなされなければならないといえます。
そのため、従来黙認してきた行為に処分を行う場合や社会情勢の変化により従来より厳しい対応をとるような場合には、事前に周知徹底し、そのような違反がないように警告を行う必要があります。例えば、飲酒運転への批判は日に日に高まっていますので、従来より厳しい処分を行う場合には、その旨社内への周知徹底が必要となります。
相当性の原則
懲戒は、規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものでなければならないという原則です。
特に懲戒解雇の場合は裁判所が厳格に判断を行い、懲戒事由に該当するとしながらも、行為の内容や行為者の諸般の事情を考慮して処分が重すぎるため無効とすることもあります。そのため、裁判例を見ながら、どのような行為、どのような事情がある場合に、どのような懲戒処分が有効となったのか、という点を知る必要があります。
懲戒の手続
懲戒処分を行う際の手続は、就業規則や労働協約等により定められていることがあります。従業員本人に弁明の機会を付与することが定められている場合、それを行わないと懲戒処分が原則として無効となります。
また、労働組合との協議や懲戒委員会の開催を定めている場合もあるので注意が必要です。
通勤手段を偽って通勤手当を不正受給し、懲戒解雇された事案
-帝京大学事件(東京地判令和3年3月18日)ー
【事案の概要】
大学の准教授の地位にあったXが、通勤手当を不正に請求した(通勤届記載の電車ではなくバイクを利用していました)などとして、Yから免職処分(退職届を提出すると退職金が支給されるが、提出しないと懲戒解雇される)とされたが、退職願いを提出しなかったため懲戒解雇された事案です。
Xは懲戒権を濫用したものであり、無効であるとして、労働契約上の地位確認等を求めましたが、裁判所は、不正は採用当初から6年以上にわたっており、損害額も約200万円と多額などとして懲戒解雇は有効としてXの請求を退けました。
【判決のポイント】
使用者が労働者に対して懲戒処分をするにあたっては、使用者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の動機、態様、結果、影響等のほか、当該行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の労働者に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、いかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有していると解すべきであり、処分が社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合に限り無効と判断すべきとされています。
この基準をもとに本件事案について見てみると、
・通勤手当の不正受給は、採用当初より6年以上の長期にわたっており、受給額全額について詐欺と評価し得る悪質な行為であること
・Yが被った損害は、合計約200万円と多額であること
・Xは、大学の職員が届出の正確性などについて確認すべきであったなど、他者に責任を転嫁するような発言もしており、真摯に反省していたものとは到底認められないこと
・Yは、当初懲戒処分のうち最も重い懲戒解雇ではなく、 退職届を提出した場合には退職と扱って一定の退職金が支給される免職を選択したこと
を総合すると、Yの判断は、社会通念上相当なものであり、裁量権の逸脱又は濫用があったということはできないとされました。
【類似の裁判例】
〈国鉄中国支社事件 最一小判昭和49年2月28日〉
懲戒権者は、どの処分を選択するかを決定するに当たっては、懲戒事由に該当すると認められる所為の外部に表われた態様のほか、所為の原因、動機、状況、結果等を考慮すべきことはもちろん、さらに、当該職員のその前後における態度、懲戒処分等の処分歴、社会的環境、選択する処分が他の職員及び社会に与える影響等諸般の事情をも斟酌することができ、これら諸事情を総合考慮したうえで、企業秩序の維持確保という見地から考えて相当と判断した処分を選択すべきである。
判断については懲戒権者の裁量が認められているとされています。
➜本件事案の判決も、上記最高裁判決に沿った一般論を判示しています。
手当等の不正受給を理由とする懲戒処分が争われた裁判例は少なくありませんが、不正受給にあたるか否か微妙な事案も多く、裁判例の結論も事案次第でまちまちとなっています。以下に2つご紹介します。
〈東京地判令和2年1月29日〉
原告が通勤届と異なり自己所有の自動車による通勤を行い、通勤手当を不正に受給したとして、けん責処分に処された事案です。
被告の通勤手当支給要綱によれば、自動車等の通勤は『公共交通機関を利用して通勤することが著しく困難で、自動車又は自転車等の交通用具の利用がやむを得ないと判断される』例外的な場合に、社員による所定の申請手続を経て、通勤手当を支給することができるとされていました。
原告は、結果として、原則である公共交通機関の利用を前提とする通勤手当と自動車通勤を前提とする通勤手当との差額約56万円を不正に受給したものと認められます。
原告は、平成23年8月末頃から平成27年12月までの長期間にわたって、実際には、自家用車で通勤していたにもかかわらず、所定の届出や申請を怠り、また、2回にわたり、事実と異なる届出をしていたこと、不正受給に係る通勤手当受給分の総額などを考慮するとその態様は悪質なものであるとして 本件懲戒処分を有効であると判断しました。
〈東京地裁立川支判平成31年3月27日〉
大学の教授であった原告が、住所を偽ることにより、自動車通勤手当を不正に受給したことを理由に定年退職直前に懲戒解雇された事案です。被告においては『自宅』と通勤届等記載の住所地、住民票記載の住所地は同義のものとして解釈、運用されていました。
原告の住民票記載の住所地は、A町であり、通勤届等にもその住所地を記載しており、平成19年4月から平成29年2月までの間、その『自宅』はA町とされていたのに対し、大学は生活の実態はB町であったとしてA町を前提とする通勤手当の受給は不正受給であるとしました。
裁判所は、
・原告がA町宅でも生活実態があること、
・授業のある日に限っても週全体でみれば、原告はB町宅
を経由してA町宅とCキャンパスとの間を通勤している
とみることもできたこと
・原告は授業以外の業務のために授業のない日にA町宅か
らCキャンパスまで出勤することもあったこと
を併せて考慮すると、原告が、平成19年4月から平成29年2月までの間、A町ルートによる通勤手当を受給したことが明らかに不正ということはできないとして本件懲戒解雇は無効であると判断しました。
このように、通勤手当の不正受給といっても、そもそも認められないこともありますし、認められたとしても処分の内容をどうするかという点は十分検討が必要です。
退職申出後、機密情報を私的に保存したとして懲戒解雇された事案
-伊藤忠商事事件(東京地判令和4年12月26日)-
【事案の概要】
Xは令和2年2月13日、会社に対して3月末日付で自主退職をする旨意思表示をしました。
その後、転職が決まっていたA社へ移る直前の3月19日にXは、会社内のシステム上に保存されていた本件データファイル等をクラウドストレージサービスであるGoogle DriveのXのアカウント領域にアップロードしました。
Yは、本件アップロード行為が機密保持違反等の懲戒事由に該当するとして、3月26日にXを懲戒解雇することを決定し、その旨をXに伝えました。
Xは、本件懲戒解雇は、懲戒権及び解雇権の濫用に当たり、違法かつ無効で、Xは、予定されていた退職日に自主退職したものであると主張して、退職する旨の意思表示をしたあとに、会社から支給に関する説明を受けた変動給(夏季賞与)の按分支払いおよび遅延損害金の支払いを求めて訴えを提起しました。
裁判所は、情報漏えいもなく会社に金銭的損害は生じていないけれど、機密情報を不正に目的外に利用したとして懲戒解雇相当と判断し、退職金不支給についてもやむを得ないと判断しました。
【判決のポイント】
①不正競争防止法違反に当たるか
一般論として、不正競争防止法上の営業秘密といえるためには、
ⅰ秘密管理性(秘密として厳格に管理されていること)
ⅱ有用性(役に立つ情報であること)
ⅲ非公知性(一般に知られていないこと)
が必要です。
これについて裁判所は、
社内システム内のXの仮想デスクトップ領域に保存されていたデータファイルのうち、(Yが有用性及び非公知性があると主張する)本件詳細主張ファイル群以外のものについては、有用性及び非公知性があったと認めるに足りる証拠はないとしました。
また、Xがデスクトップフォルダに保存していた情報のうち、大部分は一般情報であって、その中に、それと比較して相当に少量の有用性及び非公知性がある対象情報が含まれる状況にあったという事実を認定した上で、社内システムに保存されている情報に含まれている対象情報は、量的に大部分を占める一般情報に、いわば埋もれてしまっている状態であり、対象情報が秘密であって、一般情報から合理的に区別されているということはできないから、本件データファイル等については秘密管理性を認めることはできないとしました(不正競争防止法違反を否定)。
②懲戒処分に客観的合理的な理由があるか
不正競争防止法違反は否定しましたが、その判断とは別に、本件アップロード行為は、大部分は引継ぎには必要のない情報であったと推認されるとし、本件データファイル等が転職先において価値のある情報とまでは言えないことも踏まえても、本件アップロード行為は、X自身又はY以外の第三者のために退職後に利用することを目的としたものであったことを合理的に推認することができると判断しました。
そのうえで、本件アップロード行為は、会社就業規則において禁止される、職務上知り得た会社及び取引関係先の機密情報を「不正に目的外に利用する」行為及び会社の文書、帳簿等を「不正に目的外に利用する」行為や「職務上の任務に背き、本人の利益を図」る行為に該当すると判断しました。
③社会通念上の相当性
懲戒解雇の相当性について、裁判所は、退職が決まった従業員による非違行為に対しては、退職金の不支給・減額が想定される懲戒解雇以外の懲戒処分では十分な抑止力とならないから、事業者の利益を守り、社内秩序を維持するうえでは、退職が決まった従業員による情報の社外流出にかかわる非違行為に対し、事業者に金銭的損害が生じていない場合であっても、比較的広く懲戒解雇をもって臨むことも許容されると判断し、Xが、会社を退職し、A社へ転職する直前の時期に行った本件アップロード行為について、懲戒解雇は社会通念上相当なものと認めることができ、権利濫用には当たらないと判断しました。
【判決を踏まえた検討】
本件アップロード行為について、不正競争防止法違反としての責任を問うためには、①であげた3つの要件が必要です。
裁判所は、「対象情報が一般情報から合理的に区分されていない」としてその責任を否定し、本件アップロード行為については、不正競争防止法違反を問うことはできないとしました。営業秘密の管理について、一般的な情報と厳格な区分をすることの必要性を考えさえる判断です。
一方で、本件アップロード行為は就業規則において禁止されている、職務上知り得た機密情報を不正に目的外に利用する行為等の懲戒事由に該当すると認めました。
就業規則の懲戒事由の記載の重要性を再認識させるものでもあります。
本判決がXに対する懲戒解雇を有効とした理由の1つとして、本件アップロード行為は悪質であって、事後的な救済は実効性に欠けるという非違行為の特殊性を前提として、Yの利益を守り、社内秩序を維持する必要性が挙げられています。そのため、退職前提でない者が同様の行為をした場合に懲戒解雇が有効となるかはそれぞれのケースごとの判断に委ねざるを得ないという側面もあります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
次にシステム開発の特徴について説明します。システム開発というのは、契約類型でいうと業務委託契約の一種です。
もっとも、システム開発契約の特殊性があります。このシステム開発の特殊性について二重の専門性という言い方をされることがあります。二重の専門性とは何かということですが、まずシステム開発であるため、ITの開発については、ベンダ(いわゆるシステム会社)の方が、専門性を有しています。ただし、システム開発で何を開発するのかというと、基本的にはユーザーの業務に利用されるシステムを開発します。そうすると、この業務の内容というのはユーザーの方がよく知っています。そのため、ITの開発、システムの開発はベンダの方が詳しいけれど、そのシステム開発によって省力化される業務の内容についてはユーザーの方が詳しいため、それぞれが知識を持ち寄らなけれいけないことになります。それによって二重の専門性、すなわち、ベンダに頼るべきところ、ユーザーに頼るべきところというものがでてくるというわけなのです。
その結果、ユーザーの方も、自分は委託しているだけだからではなくて、自分たちの業務内容だとか、どんな風にしたら効率化できるのかをしっかりとベンダに伝えないとなりませんし、ベンダはITの専門家としてどういったものがITで実現できるのか、もしくは、どんなことは苦手なのかということを伝えながらお互いの意思く疎通をはからないといけないということになります。
例えば、よくシステム会社の方から相談を受ける内容として、システムの開発をある程度進めたのに、後で仕様の変更をしてほしいとユーザーの方から言われることがあるそうです。ユーザーの方からすると、ボタンの付け替えだけでしょうとか、ちょっと表示を変えるだけでしょうというように軽い気持ちで伝えているのかもしれません。けれど開発の方からして見ると、その変更に、開発の工数が結構かかりますということがよくあります。
これはお互いの意思疎通がよくできていないことの結果です。特にユーザーというのはベンダにお任せしてしまう傾向にありますので、 ベンダ側としてもそうではないということを、もっと業務内容をしっかりと伝えてもらわないと開発は難しい、工数がかかるということの啓発からしていかないといけません。
これを法的にとらえると、ユーザーの場合は協力義務、ベンダに協力する義務として構成することができ、一方で、ベンダの方は PM義務(プロジェクトマネジメント義務)に分類することができます。これに基づいて裁判でも、ユーザーは協力義務を果たしたのか、ベンダはPM義務を果たしたのか、といった観点から判断されます。
このようなシステム開発の特徴というものを見ていたときに、業務委託全般についてはコラムなどでも解説していますが、業務委託といっても、その性質が請負だったり、準委任だったり、様々という解説をしました。
簡単に請負とは何かというと、請負は仕事を完成させるというものです。これに対して準委任というのは、完成ではなくて、ある業務を遂行するというものです。
システム開発契約は請負でも準委任でもどちらもあり得ますが、ユーザーからすると、きちんとシステムを完成させてほしいという意味で請負を好みます。一方で、ベンダ側は、完成とすると、ユーザーの要望が拡大した場合などに、どこまでしたら完成なのか、判断が難しい場合があるので、準委任の方を好むという傾向があります。
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最初に、システム開発契約とシステム開発の分類について説明します。
システム開発契約とは、委託者(ユーザー)が受託者(ベンダ)に対し、システム、ソフトウェアの開発に関する業務を委託する契約と定義することができます。
システム開発についてどのような分類ができるかというと、まず開発の仕方に基づく区別として、典型的なものとしてはウォーターフォール型とアジャイル型というものがあります。また、元となるパッケージソフトがあるかどうかの区別として、スクラッチ開発、もしくはパッケージ開発というものがあります。また、当該システムを用いて行う業務が現時点のユーザーの業務と同様かどうかに基づく区別としてASISやTO BEというものがあります。
この中で、ウォーターフォールモデルとアジャイル開発について、どのような違いがあるかについて説明します。
ウォーターフォールというのは、英語で滝を意味し、水が上から下に落ちていくというイメージで、システム開発の工程を分割していって、それが順次進んでいき、後戻りすることはない。つまり、上から下に水が落ちてそれは戻ることはないというものです。
アジャイル開発というのは、それと異なり、開発して、検討して、また開発をしてということを反復継続しながらシステム開発を進めていくというものです。
ウォーターフォールは、設計の過程で仕様の詳細化をした上で、製作したプログラムの設計プログラムを逆にたどってテストしていく工程が標準的であり、企画、要件定義、ここをしっかりと定めた上で基本設計をして、その詳細設計と仕様の詳細化をしていく。そしてプログラミングをしていく。その後、それが正しくできているかどうかを単体テスト、結合テスト、システムテストという形で一連のテストを行った後、運用・保守に移るものです。
最初に説明したようににウォーターフォール、水が流れ落ちるように、前の工程で決めたものはそこから落ちていくと、後に戻れないということで、大規模な開発の場合に用いられることが多いです。
次にアジャイル型ですが、開発対象を多数の機能に分割していって、それぞれの機能に優先順位付けをした上で、それぞれ開発していくものです。
典型的なものがスクラムと言われるもので、開発期間を1週間とか1ヶ月程度、スプリントと呼ばれる期間に区切って、さらにそれを1日単位のデイリースクラムというものに区切って、短期間での開発、そして目標、そしてその見直しということを繰り返していくという開発仕様です。
それぞれどんな特徴があるのかというものを表にまとめていますが、ウォーターフォール型の場合にはしっかりと機能を定めて、それに基づいて開発していく。一方で、一度決めた開発内容は変更しにくいし、途中で機能が不要になったり、機能に求めるべき内容が変わったりした場合、柔軟に対応できない。一方でアジャイル型は機能を分割して、それぞれを作って、また反復して違うものをやりながら、というような形で柔軟にできるという特徴があります。
ウォーターフォールモデル |
アジャイル開発 |
|
作 業 工 程 |
すべての機能について同時に要件定義・基本設計・詳細設計等の要求の確定プロセスをこなしたうえで、開発(プログラミング)を行い、単体テスト・結合テスト・システムテスト等のテストを行う |
機能を分割して、当該分割した1つ1つの機能について要求確定・プログラミング・テストを順次行っていく |
柔 軟 性 |
一度決めた開発内容は変更しにくい 途中で機能が不要となったり、機能に求めるべき内容が変わったりした場合に柔軟に対応できない |
開発内容を柔軟に変更しやすい 未対応の機能が残っている段階で、最優先で開発すべき機能が出てきた場合には、未対応の機能の優先順位を落として新規機能を開発するなど柔軟な対応ができる |
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債権(売上)回収が問題となったときに、するべきことについて3回に分けて解説しいます。
今回は最後の3回目です。
⑸合意ができた場合/できなかった場合
①合意できた場合
交渉の結果、合意ができた場合に合意内容を書面化しますが、合意書面作成時の注意点があります。
㋐書面のタイトル
特定がしやすくて便利といった理由だけでなく、合意内容が不明確で解釈に争いが生じたときはタイトルが判断基準となることもあるため、合意内容に合ったタイトルをつけ他の書面と識別できるように してください。
㋑給付条項
給付条項を5W1Hを意識して記載しましょう。給付条項は訴訟や執行に際して最も重要な部分ですので計算間違いなどをしないよう慎重に対応してください。また、振込送金による支払の場合は、振込口座や手数料負担をどちらが負担するかについても定めておきましょう。
㋒期限の利益喪失条項
支払期日や分割払期日が定められている場合に、定められた期日までは支払わなくてよいという利益を期限の利益といいます。そして、分割払い中に滞納が生じたときは、債務者はその後の期限の利益を失い、残債務も即時一括で支払わなくてはならないといったような内容を定める条項を、期限の利益喪失条項といいます。
期限の利益喪失条項にも様々なバリエーションがありますので、それぞれの条項でどの時点で期限の利益喪失になるかということは、あらかじめ考えておきましょう。
㋓署名者
合意の当事者が会社である場合、代表権がない者による行為の効力を会社に帰属させることはできないため、合意書に署名・捺印する者が、会社を代表して契約を締結する権限を有している必要があります。営業部長等の契約締結権限を有している者は他にもいますが、名刺に記載されている肩書だけでは確定できませんので、契約に関する代表権や代理権を有しているかどうかということは、事前に確認するようにしてください。
㋔捺印
私的に作成する書面について捺印する印鑑の種類に制限はないので、実印以外の印鑑でも書面の有効性に問題ありません。しかし、書面の成立の申請が争われた場合では、実印と認印ではその効果に大きな違いがありますので、実印が望ましいです。
②交渉が決裂した場合
交渉決裂時には、通常は訴訟手続に進みますが、民事保全、民事調停、支払督促手続といった手続を選択することも可能です。
㋐民事調停
民事調停とは、裁判所で調停員を挟んで協議を行う手続であり、管轄は簡易裁判所です。調停員という第三者を間に入れることにより、当事者が冷静に話し合いを進めることができたり、細かい点について協議し、書面を残すことで、支払いの付随的条件や他の条件等を定めたりできるといったメリットがあります。
一方で、債権の存否自体に争いがある場合や、協議をしても相手方が応じる見込みが薄い場合には、民事調停は不適切です。
㋑支払特則手続
支払督促手続とは、債権者の書面による申立てのみで、債務者の立ち会いなしに、金銭給付の債務名義が取得できる手続です。支払特則の申立て→支払督促→仮執行宣言の申立て→仮執行宣言という段階を経て、債務名義と同一の効果が生じ、仮執行宣言付支払督促は、執行文の付与を受けずに、執行手続を行うことができます。管轄は、債務者の普通裁判籍の簡易裁判所であり、仮執行宣言の前に債務者から異議が出た場合は、支払督促は効力を失い、通常訴訟に移行します。
支払督促手続は、金銭の多価によらず、債務者の事情を聴取することなく、債務名義と同一の効果が生じるため、債権の存在に争いがなく、相手方が異議を出さないことが見込まれる場合は、簡易に債務名義を取得する方法として有用です。
一方で、債権の存否または額に争いが生じるおそれがある場合や、債務者が分割払いを求めている場合には、債務者から異議が出される可能性があります。債務者から異議が出されると、債務者である被告の住所地を管轄する裁判所が訴訟の管轄裁判所になります。一般的な裁判では、財産権上の義務履行地を管轄とすることができるため、債権者側の住所地を管轄する裁判所を管轄裁判所にすることができますが、支払督促手続の場合には、財産権上の訴えの義務履行地を管轄とすることはできません。そのため、被告の住所地の裁判所が、債権者の住所地より遠方である場合には、異議が出された場合に管轄裁判所がどこになるかを検討しておかなければならないというデメリットがあります。しかし、現在はWEB会議などを利用できるため、以前に比べるとこのデメリットは薄れてきています。
また、異議を出された場合には、通常訴訟に移行し、期日が改めて指定されるため、当初から訴えを提起した場合よりも、かえって時間がかかってしまうおそれもあります。
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債権(売上)回収が問題となったときに、するべきことについて3回に分けて解説しいます。
今回はその2回目です。
⑶任意の交渉
任意交渉の留意点は6つあります。
1つ目は、誰を交渉の場に出席させるかです。債権者側は、取引の実態を知っている担当者を同行させます。交渉の場で、債務者から反論が出た場合、その取引の実態に精通している者がいないければ、その場で確認できず、時間を要するためです。
一方で、債務者側には、担当者のみならず、支払いについての決定権・代表権のある者を同席させるよう求めます。そうしなければ、持ち帰って検討することになり、債務者側に時間稼ぎを許すことになってしまうからです。
2つ目は、情報収集です。任意交渉の時点では、双方とも歩み寄りの姿勢を持っているはずです。債権者としては、この機会に、任意の交渉が決裂したり、合意が履行されなかった場合に備えて、強制執行が可能な資産の情報を得るとよいです。債務者の取引銀行や主要取引先等について着目することが重要です。ただし、あまりに露骨に聞きすぎると、話し合いで解決する気はなく、情報収集に来たといった印象を与え、債務者に警戒されることになりますので、注意が必要です。
3つ目は、記録化です。交渉に臨む人数は、話す人・メモを取る人のように分業ができるよう、複数が望ましいです。また、複数人で交渉に臨むことで、言った・言わないの紛争を防止することもできます。相手方に無断で交渉内容を録音するといった方法も考えられ、このような録音であっても、必ずしも証拠能力が否定されるわけではありません。ただし、無断で録音を行ったことが判明すれば、信頼関係が崩れて交渉が決裂するリスクもありますので、録音の必要性は慎重に検討してください。
4つ目は、引き延ばしの防止です。債務者が破産や民事再生の申立てを行うために、債権者からの要望に対し、引き延ばしを図ることが考えられます。破産等の法的手続が始まってしまうと、債権回収が困難になるため、債権者としてはその前に少しでも回収を図る必要があります。
引き延ばしの防止の対策として、決定権のある者を交渉に同席させることが挙げられます。こうすることで、交渉の場で回答をするよう、債務者に要求できます。もし、やむを得ず後日回答するとなった場合でも、必ず回答期限を設けてください。
5つ目は、債務の確認です。任意交渉が決裂し、法的手続に入った段階で、債務者が何らかの抗弁を主張することがありますが、任意交渉の段階で、債務の内容を確認しておけば、そのような紛争を避けることができます。また、債務承認があったとして、時効の更新事由にもなります。時効の更新については、特別な合意書を作成しなくても、債権者作成の請求書の余白に、「上記請求内容に間違いはありません」と記載して、日付と署名・捺印をしてもらうなどの簡易な方法で問題ありません。その場合、捺印は代表者印が理想的ですが、紛争予防という観点からは、担当者の印鑑でもあるに越したことはありません。
6つ目は、違法行為を行わないことです。債務者が誠実に義務を履行しないとしても、自力救済や暴言、脅迫などは絶対に行わないでください。暴言や脅迫は勿論、自力救済も原則として違法です。
⑷相殺・担保からの回収
①担保
長期分割の弁済となる債権の支払確保のため、交渉によって新たに担保権を取得することが考えられます。当事者の契約により設定できる約定担保権は、抵当権・根抵当権(不動産)、動産譲渡担保・動産質(動産)、債権譲渡担保・債権質(債権)、連帯保証人(人的担保)等が挙げられます。
これらの約定担保権ですが、資金不足の会社の資産は、既に金融機関などが担保に取っていることがほとんどですので、担保に適した資産が残っていることがない場合もあります。
②相殺
相手が金銭を支払えなさそうな場合に、債権を回収する方法は3つあります。
1つ目は、相殺です。相殺する債権の弁債期が到来していれば、相殺は可能です。相殺の意思表示を行う場合は、内容証明郵便で相殺通知を送付するのが一般的ですが、相殺の意思表示には、条件または期限をすることができませんので、例えば、「〇〇までに支払わないときは相殺する」といった記載はしないようにしてください。
2つ目は、代物弁済(債務の弁済に変えて債務者の資産を譲り受けること)です。代物弁済は特に指定しない限り、給付した物の価格にかかわらず、債権全部が消滅してしまいます。これを避けるには、「売買代金債権100万円のうち50万円の支払いに変えて〇〇を引き渡す」というように、代物弁済により消滅すべき債権の範囲を特定しておく必要があります。逆に、物の価格が債権に比べて過大であるときは、その過大な部分について不当利得返還請求がなされる可能性もあります。そのため、消滅する債権と代物弁済を受けるものの価格とは適切なバランスをとっておきましょう。
3つ目は、債権譲渡です。債務者が第三者に対して有する債権を債権者が譲り受けるときは、債権譲渡の対抗要件を具備する必要があります。債権譲渡の対抗要件は、譲渡人からの通知または債務者の承諾です。
ただし、上記手段は後日、詐害行為(債務者が債権者を害することを知りながら、自己の財産を減少させる行為)として争われるおそれもある点には注意が必要です。
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今回は債権(売上)回収が問題となったときに、するべきことについて3回に分けて解説します。
⑴方針決定
債権回収の方法としては、任意回収と法的手段の2つがあります。
任意回収と、法的手段のいずれかが適しているのかは、㋐支払意思、㋑資産の存否、㋒担保提供の意思の存否、㋓現状事業を継続しているか、㋔将来的な事業継続の見込み、㋕強引な回収によるレピテーションリスクの存否といった要素から総合的に考慮します。
例えば、相手方に支払意思がある場合には、任意回収の方向に傾きますが(㋐)、支払意思があっても支払いにあてる資力がなく、換価可能な資産がある場合(㋑)には、法的手続に進まざるを得ません。つまり、各要素の有無で、あらゆる事案に共通する結果が出るというわけではありません。
債権回収をする場合には、任意交渉を先行させ、交渉が決裂したときに法的手段を取ることが一般的ですが、一定の場合には、交渉をせず、いきなり法的手続を行うことも考えられます。
1つ目に、相手方の支払拒絶の意思が固く、任意交渉をしても支払う可能性がほとんどない場合です。ただし、債務の履行遅滞に陥った債務者は支払えないと弁解することは珍しくないため、必ずしも支払拒絶の意思が固いとは限りません。そのため、まずは任意交渉を試みてもよいでしょう。
2つ目に、継続的取引の場合で遅滞額が大きい場合です。
継続的取引の場合、支払遅滞が複数回に及び、また金額も多額になった場合、債務者が支払いを諦めることがままあります。このような債務者に対して法的手段を取ることは、債務を支払う意思にさせる効果があります。
3つ目に、資産散逸のおそれが高い場合です。債務者が保有資産を処分している場合、時間をかけて交渉して債務を支払わせる合意を得ても、すでに資産が処分されてしまっており、債務を支払うことができなくなっているという状況も考えられます。このような場合は、保全手続を行う等の方法をとることになります。
4つ目に、換価が容易な資産がある場合です。大口の売掛先の情報を取得している場合など、容易に資産から債権回収が見込まれる場合には、保全手続を行うことが考えられます。一方で、売掛金や預金の仮差押えをすることで、取引先の信用不安をもたらし、その結果、取引先が破産した場合には、債権回収にも影響が出ますので、注意してください。
⑵書面による催告
書面による催告をする場合の注意点は4つあります。
1つ目に、請求債権が特定できているかということです。相手方との間に複数の取引があるときは、他の債権と区別できるよう、請求債権を明確にしてください。これを怠ると、請求による期限到来が認められないとか、時効完成猶予の効果が得られないといったおそれが生じます。
2つ目に、記載内容に客観的な根拠があるのかということです。特に書面の内容が高圧的になっていないかに注意してください。
例えば、「支払いがないときは裁判手続により、民事・刑事上の責任を追及させていただきます」といった表現はありがちですが、本当にそのような責任追及が可能なのかを考える必要があります。「裁判」や「刑事責任」といった言葉は、債務者に必要以上に恐怖心を与えてしまうおそれがあります。
3つ目に、催告書の差出人を誰にするかということです。
差出人は、依頼者本人名または代理人弁護士名のいずれかを選択します。代理人弁護士名の文書は、債権者が債権回収に本気であることが伝わり、債務者に対する心理的な圧力が高まります。一方で、相手方によっては、弁護士からの通知を威圧的と捉えて感情を害し、かえってその後の話し合いが難しくなってしまうという場合もあります。
弁護士が関与して催告書を送付する場合があっても、必ずしも差出人が弁護士名である必要はありませんので、交渉経緯や相手方の性格等を考慮して、事案に適した方法を選択してください。
4つ目に、郵送方法を何にするかということです。
意思表示は相手方に到達することにより、効力が発生するので、催告書を送付する場合は、後日の紛争に備えて、相手方が催告書を受け取ったことを証明できる方法を取ることが必要です。例えば、催告書を送付する際は、書留+内容証明+配達証明を利用することが多いです。これにより、請求した内容、請求の日、相手に到達した日がすべて立証できるからです。
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⑷保護期間
㋐著作権
著作権の保護期間は、原則として、著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後(死亡の翌年の1月1日から)70年を経過するまでです(著作権法51条、57条)。
例えば、著作物が1950年4月1日に創作され、著作者が2010年3月31日に死亡した場合の著作権の保護期間は、1950年4月1日から(2011年1月1日の70年後の)2080年12月31日までとなります。
なお、無名または変名の著作物や団体名義の著作物、映画の著作物の保護期間は、著作物の公表後70年が経過するまで著作権が存続します。
㋑著作者人格権
著作者人格権の保護期間は、著作者が著作物を創作した時点から著作者が死亡するまでです。
著作権の保護期間にズレがあるのは、著作者人格権は、著作者の一身に専属する権利であるからです(同法59条)。
これまで、著作権は著作者に帰属すると説明しましたが、職務著作はその例外です。
著作権法15条1項では、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約等に別段の定めがない限り、その法人等とする旨が規定されています。
職務著作の要件
従業者が創作した著作物が職務著作と認められるためには、以下の①~④を全て満たす必要があります。
①法人等の発意に基づくこと
会社の指示とは関係なく従業者が創作した著作物は、職務著作には該当せず、原則どおり当該従業者が著作者となります。
②会社の業務に従事する者が職務上作成するものであること
従業者が業務とは関係なく趣味で創作した著作物は、職務著作には該当せず、原則どおり当該従業者が著作者となります。
③法人等が自分の名義で公表すること
未公表のものであっても、法人等の名義での公表が予定されているものや、公表される場合には法人等の名義で公表されるべきであるものについては、この要件を満たすと考えられます。
④契約等に別段の定めがないこと
契約等で著作者は当該著作物を創作した従業者である旨の定めがある場合には、①~③を満たしていても、当該従業員が著作者となります。
著作権法27条及び28条
契約書に、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を〇〇に譲渡する」という記載がよくありますが、このような規程を定めるのは、著作権法61条2項の規定があるからです。では、同法61条の規定を見てみましょう。
第61条
1 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
このように、同法61条2項によると、著作権を譲渡する場合に、同法27条又は28条の権利を譲渡目的として記載しなければ、これらの権利は譲渡されません。
同法27条は、二次著作物を創作する権利であり、同法28条は二次的著作物の利用に関する権利であるため、これらの権利を譲渡してもらわなければ、譲受人は二次的著作物の創作や利用ができず、著作物の利用が大幅に制限されてしまいます。
このような理由で、「著作権法第27条及び第28条の権利を含む」という文言が必要となります。
著作者人格権の不行使特約
前述したとおり、著作者人格権は著作者の一身に専属する権利であり、他人に譲渡することはできません。
そこで、著作者が著作物を譲渡する場合、著作者は著作者人格権を行使しないという不行使特約を設けることは多いです。
契約書の文言
以上のポイントを踏まえて、実際の契約書を見てみましょう。この文例は、委託者有利の業務委託契約書です。
第〇条(権利の帰属)
1 本委託業務の遂行の過程で得られた発明、考案、意匠、著作物その他一切の成果に係る特許、実用新案登録、意匠登録等を受ける権利及び当該権利に基づき取得する産業財産権並びに著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条に定める権利を含む。)その他の知的財産権(ノウハウ等に関する権利を含む。)は、全て発生と同時に委託者に帰属する。この場合において、受託者は、委託者に権利を帰属させるために必要となる手続を履践しなければならない。
2 受託者は、委託者に対して、本委託業務の遂行の過程で得られた著作物に係る著作者人格権を行使しない。
3 委託者及び受託者は、前二項に定める権利の帰属及び不行使の対価が委託料に含まれることを相互に確認する。
他人の著作権を侵害した場合には、侵害した者には以下の問題が生じます。
①差止請求
著作権者は、著作権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止や予防等を請求することができます(著作権法112条)。
差止請求を受けた場合は、侵害行為に関連する商品等の回収を強いられるため、会社の業績に多大な影響を及ぼします。また、レピュテーションリスクも生じ得ます。
②損害賠償請求
著作権侵害行為をした場合、著作権者が損害賠償請求をするおそれがあります(民法709条)。
この場合、損害額の推定規定が設けられているため(著作権法114条)、著作権者の立証責任が軽減されます。
③刑事罰
著作権侵害をした者には、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されます(著作権法119条1項)。
このように、著作権侵害には多大なリスクがあるので、他者の著作権を侵害しないように気を付けましょう。
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著作権とは、著作物の利用に関して著作物を創作した者に認められた権利のことで、著作権法にルールが定められています。著作権は特許等とは異なり、審査を経ずとも創作時から自動で発生する点がポイントです。
⑴著作物の定義
「著作物」とは、①思想又は感情を②創作的に③表現したものであって、④文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1項1号)。
「著作物」と聞くと、小説や曲、映画等を想像するかもしれませんが、舞踊や建築、プログラム等対象になるものは多岐にわたります(同法10条1項各号)。
⑵著作者人格権
(広義の)著作権は、(狭義の)著作権と著作者人格権に分類することができます。
著作者人格権は、著作者の人格的な利益を保護する権利で、㋐公表権、㋑氏名表示権、㋒同一性保持権の3つに分類することができます。
なお、著作権は譲渡することができますが、著作者人格権は著作者の一身に専属する権利であるので、他人に譲渡することはできません(同法59条)。そのため、契約書の記載でも配慮が必要です。
㋐公表権(同法18条)
公表権とは、未公表の著作物(著作者の同意を得ずに公表されたものを含む)を公表する権利です。簡単にいうと、著作者が、自分の著作物を公表するかしないかを決めることができる権利のことです。
㋑氏名表示権(同法19条)
氏名表示権とは、著作物の原作品または著作物の公衆への提供・提示に際し、著作者名を表示するかしないか、表示する場合はどのような著作者名を表示するかを決めることができる権利です。著作物を公表する場合、本名でもペンネームでもよいですし、著作者名を付けなくても問題ありません。
一方で、著作者以外の者が著作物に表示されている氏名表示を許可なく変更したり、削除したりして公衆に提供・提示をすると、氏名表示権侵害となります。
㋒同一性保持権(同法20条)
同一性保持権とは、自身の著作物やその題号の同一性を保持し、著作者の意に反して許可なくこれらを変更したり改変されたりされない権利です。
送り仮名の変更、読点の切除、「・」を「、」への変更、改行の省略をした場合でも、同一性保持権侵害となりますので、注意してください(東京高判平成3年12月19日)。
⑶著作権に含まれる権利
著作権には、以下に列挙する権利が含まれています。著作権者は、これらの権利によって保護された行為を独占的に行ったり、これらの行為を第三者に対して許諾することができます。
① 複製権(同法21条)
著作権のコピーを作成する権利
②上演権・演奏権(同法22条)
著作物を公に上演し、または演奏する権利
③上映権(同法22条の2)
著作物を公に上映する権利
④公衆送信権・公衆伝達権(同法23条)
著作物をテレビやインターネット等で公に送信する権利
⑤口述権(同法24条)
言語に関する著作権(詩、小説等)を公に読み聞かせる権利
⑥展示権(同法25条)美術の著作物または未発行の
著作物を、オリジナルによって公に展示する権利
⑦頒布権(同法26条)
映画の著作物を複製物によって頒布する権利
⑧譲渡権(同法26条の2)
映画の著作物を除く著作物を、公に販売等の方法で提供する権利
⑨貸与権(同法26条の3)
映画の著作物を除く著作物を公に貸出しできる権利
⑩翻訳権、翻案権等(同法27条)
著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化し、二次的著作物を創作する権利
⑪二次的著作物の利用に関する原著作権者の権利(同法28条)
原著作物を基に創作された二次的著作物につき、原著作者が保有する権利
特に、⑩、⑪は契約書レビューの場面で重要となる権利です。詳しくはその2で解説します。
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