今回は製造業で注意すべきポイントについて、Q&A形式で説明したいと思います。
1―1 秘密保持契約
Q:秘密保持契約の原案をチェックするとき、どのような点に注意して検討すべきでしょうか?
A:相手方との取引実態や開示予定の秘密の重要性などを踏まえ、契約の目的、秘密情報の定義、開示先の例外、契約の有効期間などの条項について、慎重に検討することが必要です。ネットではたくさんの秘密保持契約書のひな型を見ることができますが、内容を確認せずに確認するのは避けましょう。
Q:秘密保持契約の目的で注意すべきポイントは何ですか?
A:目的の範囲が広すぎると秘密保持義務を課した意味が弱まる一方で、狭すぎると目的外利用になるケースが増えてしまうので、バランスが求められます。
Q:秘密情報の範囲は、どのように定めたらよいでしょうか?
A:自社が主な開示主体であれば、広く設定したほうが一般的には有利です。一方で、相手方が主な開示主体であれば、秘密の範囲を明確かつ限定するために「秘密」の記載などで特定を要するとしておくべきです。
Q:秘密保持契約の有効期間の定めで気をつけるべき点はありますか?
A:開示済みの秘密情報を保護するために始期と終期には注意してください。
契約を締結する前に秘密情報の受け渡しがある場合は、始期を契約締結時としてしまうと、契約締結前に受け渡しがなされた秘密情報が契約で保護されなくなってしまいます。
※過去のコラムでも、秘密保持契約書を取り扱っておりますので、そちらも併せてご参照ください。
1-2 1回限りの契約
Q:1回限りの契約でも、契約書を作成しないといけませんか?
A:契約は、一般的には申込みと承諾の意思表示の合致で成立するため、契約書の作成は必須ではありません。注文書と請書でも契約は成立します。
しかし、注文書に記載されている契約条項の内容を確認せずに請書を送付すると、その内容で契約が成立してしまうので注意が必要です。
注文書に規定しない事項については、民法または商法などの任意規定が適用されることになるので、自社にとってそれらの規定よりも有利な規程を盛り込むことができるかという観点で検討します。
下請法の適用がある場合には、書面の交付や支払期日の定めなど、別途義務が生じるので下請法の適用対象であるかには注意をしてください。
1-3 取引基本契約書
Q:基本契約書を取り交わす意義は何ですか?
A:同一の当事者間で反復継続して同種の取引を行う際には、特別の事情がない限り、あらかじめ定められた同じ内容で取引をすることが簡便です。
また、基本契約書を取り交わすことで、当事者が不特定多数の相手と取引を行う際に、一括して共通の対応をすることも可能となります。
個別の取引ごとに異なる条項については、取引時に注文書・請書または個別契約で定め、共通事項は基本契約書をあらかじめ取り交わしておくことで、個別の取引のたびに契約書を取り交わす手間を省くことができます。
Q:自社ひな型を作成する場合の留意点は何ですか?
A:法令などに基づく制限が課される場合がある点が挙げられます。
例えば、下請事業者との契約では、下請法の規制にも留意する必要があります。
あまりに自社に有利な条項にすると、相手方から多くの修正を求められ、契約交渉が長引いてしまうおそれもありますので、有利にすればするほど良いというわけではありません。
Q:相手方ひな型を用いる場合の留意点は何ですか?
A:自社に不利な条項が含まれていても、全ての条項を修正するのは困難なので、修正を求める条項に優先順位を付けて交渉に臨みましょう。
自社が対応できない点、受け入れるとリスクが大きい点など、修正が必須な条項のために、重要度の低い条項は譲歩するなどのバランスが求められます。例えば、管轄裁判所が自社から遠い場合であっても、日本国内である限り対応できないということは考えにくいため、優先順位は低くなるといえます。
Q:力関係の差が大きく、相手方のひな型を受け入れざるを得ない状況である場合には、どのような手段が考えられますか?
A:保険をかけてリスクに備えておいたり、仕入れた商品を顧客に売却している事業者であれば、顧客との間の基本契約書と同様の内容の基本契約書を仕入先との間で結ぶなどの方法が考えられます。
1-4 印紙税
Q:印紙税とは何ですか?
A:印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や領収書などに課される税金で、印紙税法別表第一課税物権表に記載されている20種類の文書が課税対象です。
印紙税の負担者は、印紙税が課される文書を作成した人であり、原則として、「課税文書に記載された作成名義人」です。
印紙税法は、日本の国内法なので、その適用範囲は日本国内に限られ、課税文書の作成場所が国外であれば、印紙税は課されません。
Q:請負契約と委任契約はどのように区別しますか?
A:前提として、請負契約書は課税文書であり、委任契約書は不課税文書です。
契約書のタイトルではなく、実質的な内容からいずれにあたるかを区別しますが、委任契約であっても、受任者の報告義務の一環として、報告書の交付が必要とされる場合があるため、成果物の有無で区別をすることは困難です。
そこで、「仕事を完成することを約し」たかどうかについて、個別具体的に判断することになります。
2-1 知的財産権
Q:特許権の成立要件や効力について教えてください。
A:特許出願をし、特許庁における審査を経て特許査定され、特許料の納付をすることで、特許権の設定登録ができます。
特許権の登録がされると、特許庁により発行される特許公報により特許の内容が公開され、特許公報はインターネットなどで誰でも閲覧が可能です。
特許権者は発明品の製造・販売を独占することができ、第三者が特許権を侵害する行為をした場合には差止めや損害賠償請求をすることができます。
特許の内容が公開されることで、競合他社が製品開発時に特許の内容を回避させるなどといった事実上の抑制力もあります。
2-2 オープン&クローズ戦略
Q:オープン&クローズ戦略とは何ですか?
A:自社の技術について、技術内容が公開される特許として保護するのか(オープン戦略)、それとも秘密として管理してノウハウとして保護するのか(クローズ戦略)を決定するものです。
オープン戦略をとった場合、特許権の登録後は、特許公開制度により特許権の内容が公開され、模倣のリスクが発生します。また、特許権の効力は出願から20年なので、権利の有効期間満了後には第三者も合法的に特許権の内容を実施されるというリスクがあります。
一方でクローズ戦略をとり自社技術を営業秘密とする場合、市場が小さければ大きな利益は期待できないうえ、情報漏洩などに対する対策が必要となります。
これらを踏まえて、事業戦略に鑑みて、特許権登録をして独占・排他的効力を発生させるか、営業秘密として半永久的に秘匿するかを判断することが必要です。
Q:オープン戦略とクローズ戦略のいずれを採用すればいいか、判断軸はありますか?
A:他社の新規参入が見込まれない自社のコア技術については特許出願をせず営業秘密としてブラックボックス化し(クローズ戦略)、
他社の新規参入のリスクがある分野については他社に先んじて特許出願を行って競争優位性を確保し(オープン戦略)、
自社の製造キャパシティ以上に市場の拡大が見込まれる分野については特許権の積極的なライセンス・アウトによる市場の拡大とライセンス収益を実現することが望ましいです。
2-3 営業秘密
Q:不正競争防止法で保護される「営業秘密」の効果とその要件は何ですか?
A:「営業秘密」として保護されると、不正競争者に対する差止請求、損害賠償請求等ができます。
不正競争防止法における「営業秘密」とは、①有用性、②非公知性、③秘密管理性を全て満たすものです。
①有用性とは、その情報が客観的にみて、事業活動にとって価値があることです。
一般的には、非公知性・秘密管理性を満たす企業内の情報は、有用性も認められます。ただし、公序良俗に反する内容の情報は有用性が否定されます。
②非公知性とは、「当該営業秘密が一般的に知られた状態となっていない状態、又は容易に知ることができない状態」とされています。
リバース・エンジニアリング(既存の製品の分解や分析などを行い、その動作原理や製造方法、設計、仕様の詳細、構成要素などを明らかにすること)によって非公知性が欠如するかについては、「一般的な技術手段を用いれば容易に製品自体から得られるような情報」であれば非公知性を失うとされる一方、「専門家により、多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であるもの」については非公知性が失われないとされています。
③秘密管理性は、3つの要件の中で最も重要とされています。
秘密管理性の判断において、判例の傾向としては、
㋐アクセス権者の限定・無権限者によるアクセスの防止(例:鍵のかかる棚に保管しておく、パスワードをかけておく)
㋑秘密であることの表示・秘密保持義務の設定
㋒組織的管理(㋐、㋑の措置が機能するように組織としての管理を行っていること)
の3つの管理を全て実行することが必要とされています。
2-4 職務発明
Q:職務発明制度について気を付けるべきポイントは何ですか?
A:前提として、会社は、従業員が行った発明を当然に特許出願できるわけではないため、特許を受ける権利を発明者から取得するなどしなければなりません。
あらかじめ従業員との契約ないし就業規則などに職務発明に係る特許を受ける権利の帰属について定めておけば、使用者は、職務発明に係る特許を受ける権利を、職務発明が完成した時点で原始的に会社に帰属させることができます。
発明報酬は、金銭に限らない相当の利益を与えることも可能です。しかし、確認の意味で譲渡証書などの書類を従業員から取得している会社や、金銭以外の報奨を追加していない会社も相当数残っているのが実情です。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
※本コラムは2023年9月実施の法律事務所のミニセミナーの内容をもとに作成しております。
秘密保持契約書(NDA)の締結のタイミング
「まずはNDAを結んでから進めましょう。」
大手企業からこのような話を受けた時どうしますか。
え、NDAって何?具体的な話をしていないのに、もう契約を締結するの?
NDAを締結するときの注意点は?
色々悩みはつきないですね。
売買などの取引をする場合や資本提携、共同研究など、何らかの関係性を持つ(契約を結ぶ)かどうか具体的に検討をするときに、事前に相手に自社が有する秘密情報を開示することがあります。この場合に、相手に秘密情報を厳格に取り扱ってもらうために締結するのが秘密保持契約です。
秘密保持契約書のことをNDAという言い方をすることもありますが、これは、No Disclosure Agreementの略です。こちらの方がスマートな言い方なので、スタートアップ企業の方は、NDAという言い方をする方が多いように感じます。
まず、秘密保持契約書を締結するタイミングですが、上に書いたように相手方と具体的な関係性を持つ前の検討段階に提供する秘密情報を守ることを目的に締結するので、取引を検討してもらう段階、秘密情報を提供する前の段階に締結をする、というのが一般的です。
大きな企業と取引や実証実験、資本提携などの話が具体化してくると、大企業側から秘密保持契約書の締結を求められて、このまま締結していいのかどうか悩まれる方も多くいらっしゃるように思います。
秘密保持契約書(NDA)のチェックの前提
「こちらから情報を出す方ですか。それとも、こちらが受け取る情報もありますか。」
秘密保持契約書を確認する際に、私がまず確認する事項です。
秘密保持契約書を確認する上で最初に確認しなければならないのは、自社が情報を提供する立場にあるのか、情報を受領する立場にあるのか、それとも、情報の提供も受領もどちらもするのか、という点です。
一般的にスタートアップ企業が、自社の商品やサービスを大企業に提案して、サービスの導入や販売代理などを検討してもらう場面においては、情報を開示する立場になることが多いと思います。一方で、大企業が検討している個別のプロジェクトに対して、自社のサービスを組み込んでもらうというような場合には、大企業が検討しているプロジェクトの内容について情報の開示を受ける一方で、自社のサービス内容については情報の開示を行うことになり、双務的な開示ということになります。
私が利用しているAIによる契約書のリーガルチェックシステムであるLegal Forceでは、契約書のひな型など書式が1000種類以上用意されていますが、秘密保持契約書だけでも多数のひな型が用意されています。M&Aの検討や業務提携の検討など、目的に即したひな型もありますし、今説明したように、情報の開示者が一方のみなのか(一方開示型)、双方ともが情報の開示者となるのか(双方開示型)に即したひな型が用意されています。一方開示型の秘密保持契約書については、情報の開示側有利、受領者側有利のひな型まで準備されており、秘密保持契約書だけ見ても、契約上の立場や場面に即した契約書を意識しなければならないということが分かります。
また、契約締結時に意識してほしいことは、提示された秘密保持契約書が双方とも情報の開示者となる双方開示型の契約書であったとしても、実際には、自社のみが情報の開示を行う場合には、情報の開示側として契約書を確認する必要がありますので、自社の立場を守るためにどのようなことに留意すべきか、以下に説明していきます。
Legal Forceの活用については、こちらもご覧ください。
秘密情報とは何か
「そもそも秘密ってなんですか。」
さて、秘密保持契約書に定める「秘密」とは何でしょうか。秘密保持契約書を見ていると大きく、2つの秘密の定義の類型があります。1つ目は、開示されたものは全て秘密情報とする考え方です。もう1つは、開示された情報のうち、秘密であることを明示したものに限定する考え方です。
以下に定義例記載してみます。
(広い秘密情報の定義)
本契約において秘密情報とは、媒体及び手段のいかんを問わず、情報開示者が情報受領者に開示又は提供する技術、営業、人事、財務、組織その他の事項に関する一切の情報を意味する。
(限定した秘密情報の定義)
本契約において秘密情報とは、書面、電磁的記録媒体、その他の媒体に化体して情報を開示する場合には、「秘密」「秘」「Confidential」等の表示を付すことによって秘密情報である旨を明示した情報を、口頭で情報を開示した場合には、情報開示者が開示の際に情報受領者に対して、当該情報が秘密である旨を口頭で明示し、かつ当該開示を行った日から10日以内に秘密情報の内容及び秘密情報である旨を明示した書面にて通知した情報を、いう。
情報を受領した者が守るべき秘密とは何か、当事者間での認識の相違が生じないよう、秘密情報の範囲を明確に定める必要があります。
では、上の2つの秘密情報の定義のうち、どちらの定義を選ぶのが良いのでしょうか。この判断にあたっては、自社が秘密情報を開示する立場なのか、それとも秘密情報を受領する立場なのか、を意識する必要があります。
情報を開示する者としては、自社の秘密情報を広く保護の対象とするためには、情報受領者に開示した全ての情報を秘密情報とする方が有利です。そのため、秘密情報の定義としては、前者の定義が好ましいこととなります。
逆に、情報を受領する者としては、自社に課される守秘義務の範囲をなるべく限定したいので、秘密情報の範囲を限定した後者の定義の方が有利です。後者の定義の場合、情報の受領者は、『 秘密 』や『 Confidential』 などの秘密であることが示されている情報に限って守秘義務を負えば足り、秘密情報として保護する必要のない情報に関してまで守秘義務を負うことを防ぐことができます。
また、口頭によって開示された情報については、媒体がないため、『 秘密 』や『Confidential』などと表示をすることができないため、受領者がどのような情報に関して守秘義務を負うのかが明らかではありません。そのため、情報受領者にとっては、守秘義務を負う範囲を明確にするためにも、「情報開示者が、開示後、書面にて秘密情報である旨を明示した情報」と明確化しておくことで、どのような情報について守秘義務を負うのかが明らかとなります。
秘密情報の複製
「受け取った資料はコピーをとってもいいんですか。」
(秘密情報の複製等を禁止する条項例)
情報の受領者は、秘密情報を複写、複製、改変等してはならない。
(秘密情報の複製を承諾制とする条項例)
情報の受領者は、事前に情報の開示者の書面による承諾を得た上で、秘密情報の開示目的のために必要な範囲においてのみ秘密情報を複製することができる。
(秘密情報の複製を認める条項例)
情報の受領者は、必要な範囲において秘密情報を複製することができる。
文書や電磁的記録媒体などで受領した情報については、コピー(複製)を行えるかどうかという点も問題になります。秘密情報の複製について特に定めがない場合には、情報の受領者は、秘密保持契約上の他の義務に反しない限り、自由に秘密情報を複製することができるというのが原則です。
しかし、情報の開示者からすると、情報の受領者が自由に秘密情報を複製できることになると、情報の受領者が秘密情報を漏洩させるリスクが高まるため、複製を制限しておきたいと考えるでしょう。そのため、情報の開示者の立場からすると、1番目の複製等を禁止する条項案のように、「秘密情報を複製等してはならない」と定めるか、もしくは、2番目の複製等を承諾制とする条項案のように「複製等をするときは開示者の同意を得なければならない」と定めておくとよいでしょう。
一方、情報の受領者の立場からすると、社内での検討や外部の者に共有する必要があるなどの理由により秘密情報の複製を予定しているときは、3番目の複製等を認める条項案のように、「開示目的のために必要な範囲において秘密情報を複製等できる」と定めておくとよいでしょう。
第三者への開示
(第三者への開示)
情報の受領者は、秘密情報の開示目的のために必要な範囲内において、親会社、子会社、兄弟会社、その他関連会社、自己及び関連会社の役員及び従業員、業務委託先並びに自己及び関連会社が依頼する弁護士、公認会計士、税理士、その他のアドバイザー(総称して以下
「役職員等」という。)に対して、秘密情報を開示できる。
秘密情報の受領者は、守秘義務を負うため、基本的には契約当事者以外の第三者に秘密情報を開示することはできません。しかし、受領者は、秘密情報の開示目的の達成のために、第三者に秘密情報を開示する必要がある場合があります。第三者とは、具体的には、関連会社、業務委託先、弁護士などのアドバイザー、自己及び関連会社の役員及び従業員などが考えられます。
情報の受領者としては、このような第三者に秘密情報を開示することを予定している場合は、「それらの第三者には、開示者の事前同意なく、秘密情報を開示できる」と定める必要があります。一方、情報の開示者の立場からすると、関係者とはいえ、第三者に開示されると情報が漏洩する可能性が高まるので、第三者への開示については限定的、もしくは、禁止してほしいと考えるでしょう。
秘密情報の返還・破棄義務
「受け取った情報は検討した後はどうすればいいんでしょうか。」
(情報の開示者に有利な条項案)
1.情報の受領者は、本契約終了後又は情報の開示者からの請求があった場合は、開示、提供された秘密情報について、原本及び複製物を返還又は廃棄等必要な措置を講じなければならない。
2. 情報の受領者は、情報の開示者が請求した場合には、速やかに前項に基づく廃棄等がなされたことを証明する書面を情報の開示者に対して提出しなければならない。
(中立的な条項案)
情報の受領者は、本契約が終了したときは、情報の受領者は保持する秘密情報を速やかに返還又は破棄する。
情報の開示者の立場からすると、秘密情報が情報の受領者から漏えいすることを防ぐために、受領者に対して、一定の場合に、秘密情報を返還または破棄することを義務づけたいと考えるのが通常だと思います。1番目の情報の開示者に有利な条項案のように、「情報の受領者は、開示者から請求があったときは、秘密情報を返還・破棄しなければならない」と定めると、情報の開示者は、必要な場合にはいつでも秘密情報の返還・破棄を求めることができます。また、秘密情報を複製することを認めている場合には、複製物も返還や破棄の対象とする必要もあります。
一方、受領者としては、情報の開示者から要請があった場合にはいつでも秘密情報を返還しなければならないとすると、情報の開示者からいつ返還を求められるかが分からず、開示目的を達成できないおそれがあります。そのため、このような規定は削除するか、削除が難しい場合は、本契約が終了したときなどに限定して秘密情報の返還・破棄義務を定めるとよいです。
秘密情報を返還・破棄したことの証明書の発行義務
秘密情報の受領者は、自分の事業所などの管轄内で秘密情報を破棄することが通常であるため、開示者は、本当に秘密情報が破棄されたかどうかを確認することができません。
そこで、開示者としては、秘密情報の管理を徹底するために、「受領者は、開示者が要請した場合には、秘密情報を破棄したことの証明書を発行しなければならない」と定めると有益です。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。