2025.7.6.Sun
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ライセンス契約①
ライセンス契約とは
ライセンス契約とは、ライセンサーが保有する知的財産権で保護されている特許・意匠・著作物・商標等の実施・使用などを第三者に許諾する契約です。
許諾する当事者をライセンサー、許諾を受ける当事者をライセンシーといいます。
ライセンシーはライセンサーから権利の許諾を受ける対価として、ライセンス料を支払います。
ライセンス契約の例として、ソフトウェアライセンス契約、コンテンツライセンス契約、特許ライセンス契約、商標ライセンス契約等があります。
ライセンス契約を締結することによる「ライセンサー」のメリットは、
①ライセンス料収入が得られる
②従業員、設備、広告料等、自社のリソースを使用することなく収益を得られる
③ライセンシーの働きで自社のブランドの知名度がより広まる可能性があることです。
「ライセンシー」のメリットは、
①他社の技術やブランド利用して利益を上げられる
②ライセンサーの技術やブランドを利用できるため、素早く効率的にビジネスを展開することができることです。
ライセンシーが利益をあげるためには、ライセンサーに支払うライセンス料とライセンス契約で得られる利益を比較することが必要です。
商品化契約
他社のキャラクターを利用した商品の製造・販売をする場合、ライセンス商品の製造・販売を許諾する商品化契約を締結します。
キャラクターに対する権利として、代表的なものは著作権と商標権です。
キャラクターがイラストで表現されている場合、美術の著作物(著作権法10条1項4号)であると考えられます。
また、イラストが商標登録されていれば、商標権者は指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を占有します(商標法25条)。
仮に商標登録をしていない場合でも、著作権や不正競争防止法によってキャラクターを保護することができます。
著作権は創作と同時に発生し、登録は不要です。しかし、著作物性が問題になったとき、当該作品が著作物に該当するかどうかは、最終的には裁判で判断されます。
また、不正競争防止法に基づき、差止請求や損害賠償請求の行使が考えられますが、行使のハードルは商標権を行使する場合に比べて厳しいです。
したがって、ライセンサーは可能であれば商標登録をしておいたほうがよいでしょう。
条項例
ライセンサーとライセンシーそれぞれが定めておくべき条項を紹介します。
「甲」がライセンサー、「乙」がライセンシーを指します。
①使用許諾【ライセンサー】 【ライセンシー】
1.甲は乙に対し、本キャラクターの使用を【独占的/非独占的】に許諾する。
2.前項に基づく本キャラクターの使用許諾の範囲は、次のとおりとする。
(1) 使用期間:〇〇年〇月〇日から〇〇年〇月〇日まで
(2) 使用指定物品:乙が製造販売する次に掲げる商品名の商品(以下「対象商品」という。)に限る。
(3) 使用地域:日本国内
3.乙は、本キャラクターを対象商品本体のほか、そのパッケージ及び対象商品の広告物等においても使用し、その制作及び頒布をすることができる。
4.乙は、甲の書面による事前の承諾がない限り、第三者に対し、本キャラクターを使用させてはならない。
5.甲は、乙による本契約に基づく本キャラクターの使用について、本キャラクターの著作者人格権を行使しない。
➡ 使用が独占か非独占か、使用期間や使用指定物品の範囲が問題ないかの確認をしてください。
②専用実施権/専用使用権の設定等【ライセンサー】 【ライセンシー】
甲は、乙に対して、本契約有効期間中対象地域において、【本件特許/本件商標】を本件商品に使用するための【専用実施権/専用使用権】を設定し、本契約締結後〇日以内に、乙と共にその設定登録申請を行う。当該設定登録申請から登録までに要する費用(弁理士報酬を含む。)は乙が負担する。
➡ 専用実施権とは、設定行為で定めた範囲で、特許発明を独占的に業として実施する権利のことです。
➡ 専用実施権を設定することで、差止請求権の行使が可能となる等の対世的効力が発生しますが、特許庁への登録が必要となる、設定後は特許権者自身も実施ができなくなるといったデメリットがあるため、実務ではあまり利用されていません。
③キャラクターの保護【ライセンサー】
1.乙は、本キャラクターが一般に対して有しているイメージ及び評価を損なう態様で、本キャラクターを使用してはならない。
2.乙は、甲に対し、本キャラクターを使用した対象商品の製造を開始する前に、そのデザイン及び試作品又は商品見本を提供して、甲の承諾を得なければならない。
3.乙は、第三者の著作権その他の知的財産権を侵害しない態様で、本キャラクターを使用しなければならない。
④著作権(及び商標権)の表示【ライセンサー】
乙は、本キャラクターを使用するにあたり、甲が指定する方法により著作権表示【及び商標権表示】をしなければならない。
⑤改変【ライセンサー】
乙は、本キャラクターの内容・表現等に変更を加える場合には、あらかじめ甲の承諾を得なければならない。
➡ 著作権法上も、許諾なしに派生のキャラクター原画を作成することは禁止されています。
⑥対価及び支払方法
⑴固定額方式【ライセンサー】 【ライセンシー】
乙は、甲に対して、本キャラクターの使用の対価として、【月額金〇〇円(税別)を毎月翌月末日までに】金〇〇円(税別)を〇〇年〇〇月〇〇日までに】、甲の指定する銀行口座に振り込み支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
➡ ライセンサーは、ライセンス収入の予測を立てることができるというメリットがありますが、ライセンス商品の売上が想定以上に良い場合であっても、予め定めたライセンスフィーしか受け取れないというデメリットがあります。
➡ 一方で、ライセンシーは、ライセンス商品の売上予測が立てづらい場合にも固定費用が発生するため、事業リスクとなりえます。
⑵売上高比例方式【ライセンシー】
1.乙は、甲に対して、本キャラクターの使用の対価として、対象商品の売上高(乙の第三者に対する対象商品の販売額)の〇%を支払う。
2.省略
3.省略
➡ ライセンシーは、ライセンス商品の売上予測を立てづらい場合であっても、ライセンスフィーを売上に比例させることでリスク回避ができるというメリットがあります。
➡ 一方で、ライセンサーは、受け取るライセンスフィーの額が低くなる恐れがあります。
⑶ミニマムギャランティ方式【ライセンサー】
1.乙は、甲に対して、本キャラクターの使用の対価として、対象商品の売上高(乙の第三者に対する対象商品の販売額)の〇%を支払う。
2.乙は、甲に対して、前項の対価に対する最低保証金額として、金〇〇円(税別)を〇〇年〇〇月〇〇日までに、甲の指定する銀行口座に振り込み支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
3.省略
4.前項の方法により報告された売上高に対する第1項の対価の累積額が第2項の最低保証金額を超過した場合、甲は、超過額を乙に請求するものとする。
➡ ライセンサーは、一定のライセンスフィー収入の確保だけでなく、ライセンス商品の売上が伸びた場合に、さらにライセンスフィーを受け取ることができるというメリットがある一方で、ライセンシーは、支払うライセンスフィーが高額になるというデメリットがあります。
ライセンス契約のコラムは次回に続きます。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。