2024.8.27.Tue
- 不動産問題
所在不明者に対する賃貸借契約の解除(不動産の法務④)
Q 当社が所有している賃貸マンションで滞納が続いていたため、催促をしているのですが、電話も手紙もつながらず、部屋に行っても実際に住んでいるか分かりません。鍵は持っているのですが、勝手に開けて荷物などを出して新しい入居者に貸していいものでしょうか。
A まず、賃貸借の解除が認められるかどうかについては、「信頼関係の破壊」が認められるかによります。「信頼関係の破壊」が認められる場合には裁判をするということになりますが、今回のように賃借人と連絡がとれず、どこにいるか分からない場合には、前提として話し合いでの解決が困難と思われますので、訴訟を提起する必要性が高いといえます。
所在不明の者への裁判手続き
我々弁護士が調査を行う場合には、住民票が別の場所に移されていないか、という調査を行うこともありますが、住民票は元の住所のまま、ということもあります。
その場合、まず、賃貸借契約の解除の意思を伝えないといけないので、現住所宛に解除通知を送ります。通常は内容証明郵便で送りますが、相手が受領しない場合や不在で受領できない場合には返送されてしまいます。そのため、相手が受領しないことが予測される場合には、郵便受けに配送されたことを担保するために特定記録郵便を発送するという方法をとります。
所在不明者の探索方法ですが、一般的には、
・賃貸物件への訪問や郵便受け、水光熱メーターなど居住の有無の確認
・近隣住民や管理人への確認
・保証人などへの確認
などがあります。この調査の内容によって、居住が確認できる(こちらの連絡に応じないだけなのか)のか、居住の痕跡がないのか、によって訴訟を行う場合の手続きが変わってきます。
賃借人の居住が確認できる場合には、解除の通知も有効に到達したものと考えられますし、訴状の受領を拒絶したとしても、賃借人の居住が確認できる旨(生活の痕跡が認められる旨)の報告書を裁判所に提出した上で、書留郵便に付する付郵便送達という手段で訴状を送達することができます。
一方で、居住が確認できない場合には、賃借人の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に公示の方法による意思表示に関する申し立てを行い、相手の所在が不明と認められた場合には、解除通知書が裁判所に掲示されるとともに官報に掲載されるなどして解除の意思表示が到達したとみなす方法で解除を行うという方法があります。
ただし、どちらにせよ、その後訴訟提起を行うため、訴状の中で解除の意思表示を行うことで対応する方法が直截的です。
賃借人の居住が確認できない場合には、公示送達の方法により訴状を送達します。
これは、賃借人の居住が不明であることを調査結果とともに裁判所に報告書を提出し、裁判所の掲示板に訴訟提起の事実を掲示することで掲示から2週間の経過をもって訴状が送達したとするものです。
これによって訴訟が進行し、賃借人が裁判所に出頭しなかったとしても賃貸人の請求を認める判決が出され、この判決に基づいて強制執行などを行うこととなります。
このように、賃借人の所在が不明の場合には対応が煩雑ですが、裁判手続きを経ずに勝手に荷物を出すなどの自力救済は禁じられており、そのようなことを行うと民事や刑事の責任に問われる可能性もあるので、絶対に控えてください。
最近では、このようなリスクを避けるために、家賃債務保証会社などの活用も進んでいます。
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