2024.1.24.Wed
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優良誤認表示(景品表示法②)について
優良誤認表示と有利誤認表示
このコラムでは、景品表示法の優良誤認と有利誤認のうち、優良誤認について説明していきます。
優良誤認と有利誤認、似たような言葉で区別がつきにくいと思います。
それぞれ、どのようなものかというと、
優良誤認とは、
商品の内容について
① 実際のものより著しく優良であると示す表示
② 事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示
を指すとされています。
たとえば、国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、松坂牛など国産ブランド牛肉であるかのような表示を行うことなどがこれにあたります。
一方、有利誤認とは、
商品又は役務の価格その他の取引条件について、
① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
② 当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
を指すとされています。
たとえば、他社商品と同じくらいの容量しかないのに、他社商品の2倍の容量と表示することなどがこれにあたります。
優良誤認表示とは
今回はこのうち、優良誤認表示について書いていきたいと思います。
優良誤認表示のポイントは、「著しく優良」であるかどうかです。「著しく」という制限がついている理由は、一般に広告・宣伝活動も多少の誇張が行われるものであるということは共通理解としてあるという点にあります。
また、「著しく優良」かどうかの判断は、業界の慣習や事業者の認識によるのではなく、一般の消費者の誤認を招くかどうか、という視点で判断するという点には注意が必要です。
たとえば、着物のレンタルに関する優良誤認の事例として、「フルセット」として表示をしていたものの、帯については別であったことが消費者に誤認を招くとして優良誤認にあたるとされた事例があります。着物業界の慣習としては、着物と帯は別という認識があったことに起因するものともされていますが、実際にレンタルをする消費者からすると、そのようなことは分からないのが通常だと思います。 このように、広告表示を行う際には、知らず知らずのうちに、業界の慣習に沿った表示をしてしまっていないか、消費者の目線で見て誤解を招くことがないか、確認が必要です。
実際に気になるのは、どのような表示を行ったら「著しく優良」と誤認される表示になるのか、という点だと思います。もともと、「著しく優良」という言葉自体が非常に幅のあるものであるため、明確な基準を出すことは難しいのですが、過去の違反例を見るのが分かりやすいと思います。
過去の処分例については、消費者庁のホームページに掲載がされています。
この中から、自社の業界に関係のありそうなものを見ながら、どの程度の表示をすると「著しく優良」にあたるのかということを見極めていく必要があります。
処分例を見ていくと、1社だけでなく同じような表示を行っていた企業に対してまとめて措置命令を出していることも多いことに気づくと思います。あの企業もこのような表示を行っているから、と安易に考えて表示をしてはいけないということを示す一例です。
不実証広告規制とは
また、優良誤認の注意点として、不実証広告規制というものがあります。これはどういうものかというと、商品やサービスについて著しく優良である旨の表示をしていた場合、その合理的な根拠資料の提出を求めることができ、その根拠を示す資料が提出されなければ、不当表示であったとみなすというものです。そして、その資料の提出期限は15日後と短いため、資料の提出を求められてから新たに実験をしようとしても間に合いません。このように提出期間が短い背景には、著しく優良である旨の表示をしている以上、表示を行っている時点でその根拠をもって行っているはず、という価値判断があるものといえます。
実際の処分例でも、不実証広告規制によって、合理的な根拠を提出できなかったということで処分されている例も多数ありますので、広告表示の根拠がしっかりとあるのかどうかということの確認も必要です。
では、どのような資料を出せば合理的な根拠を示したことになるのでしょうか。
これについて、公正取引委員会が平成15年10月28日に出した不実証広告ガイドラインにおいては、
① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
の2つの要件が必要であるとしています。
また、消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏づけとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観的が十分に確保されていることが必要とされています。
実際の処分例でも、モニター数不足やモニターに社員などが含まれていることを理由として客観性が否定された例もあるため、体験談やモニターの意見等を根拠とする場合には、これらのことにも注意が必要です。
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