2023.12.22.Fri
- M&A
法務DDはどのようなことをするのか
法務DDのプロセス
法務DDを行う場合は、おおむね以下のようなプロセスとなります。
(事前にM&Aのスキームについて相談を受けることも)
① 関係者での事前協議・キックオフ会議
② 対象会社に対する資料の請求
③ 開示された資料の確認、QAシートの作成
④ 現地でのQAの確認、資料の確認
⑤ 追加の資料請求、QAの実施
⑥ 法務DDの報告書の作成、報告
① 関係者での事前協議・キックオフ会議
まず、M&Aの対象となる会社(「対象会社」という言い方が一般的に使用されます。)の概要やM&Aのスキーム(株式譲渡なのか、事業譲渡なのかなど)についての確認を行います。
この際、買主候補が対象会社のどこに魅力を感じているのか、についての確認が重要です。
たとえば、対象会社が持つライセンス権などが重要であれば、M&Aを実行した後にライセンス権が承継されるのかどうかが非常に重要な検討事項となりますし、経営者のカリスマ性が魅力であれば、M&Aの実行後も引き続き経営に携わってもらえるのか、後継者候補をどのようにするのかなど、法務DDの重点ポイントの確認やその後の契約での誓約事項(○年間は代表取締役を継続するなど)の設定で非常に重要な意味をもちます。
その後、キックオフ会議を行い、買主候補や他のDD担当の専門家を交えて相互の懸念点の共有などをすることもあります。対象会社を訪問する日時が重なるときなどはヒアリング時間などの調整が必要となることもありますし、専門家相互の確認事項を共有したりします。
② 対象会社に対する資料の請求
キックオフ会議の前後に、対象会社に資料を準備してもらうために、資料請求リストを作成しますが、資料請求リストを準備するにあたって、対象会社のビジネスモデルに対応した内容で作成することが重要です。
資料請求リストを作成したら、対象会社担当者との間で資料請求リストの内容について説明をします。担当者へ説明することで、担当者は的確な書類を準備することができ、DDを具体的にイメージできるようになります。
③ 開示された資料の確認、QAシートの作成
開示資料を確認した後、開示資料からは確認できない情報や疑問点を明らかにするために、対象会社の役員及び従業員に対するQAシートを作成します。
QAをする目的は、対象会社のリスクを洗い出すことにあり、具体的にはその内容をまとめた報告書を作成することとなりますので、QAシートの作成時には、報告書に記載すべき内容をイメージしながら、そのために何を確認すべきかを逆算しながら質問事項を考えていきます。
④ 現地でのQAの確認、資料の確認
その後、開示された資料を精査したうえで、質問事項について実務上十分な知識を有している者に対してQAを行います。
そのために、どの質問をどの方に質問するのが良いのか、という点を事前に対象会社の中でも検討しておいてもらう必要があり、それをもとに担当者ごとのヒアリングの時間を考えていきます。特に、他の専門家と同じタイミングでQAを実行する場合には、同じ担当者へのヒアリングの時間が重複しないように、調整が必要となることもあります。
⑤ 追加の資料請求、QAの実施
③で開示された資料や④のQAの結果を踏まえて、新たに判明した事実についての調査など、追加で開示が必要な資料をリストアップしていきます。
また、④でQAを行った後には、QAの結果を具体的に報告書に落とし込んでいきますが、報告書作成の過程でも不明瞭な内容が出てきたり、追加で質問したい事項が出てきたりすることがあります。
そこで、追加で質問したい事項をQAシートにまとめ、再度QAを行います。
場合によっては、確認事項がわずかであったり、速やかに確認したいなどの理由により、担当者にメールや電話などで直接確認することもあります。
⑥ 法務DDの報告書の作成、報告
①から⑤の過程を経て、法務DD実施結果を報告書にします。報告書の分量は、会社の規模によって異なりますが、買主候補は報告書の内容をもとに方針を決定するため、対象会社の問題点とその分析だけでなく、それらの対応策についても記載することが求められます。
報告書を作成した場合であっても、買主候補に口頭で報告する機会を設けることが多いです。報告の機会を設けることで、買主候補に対して法律問題を補足説明することが可能になりますし、買主候補の法務DDの結果に対する理解を深めることも可能となります。
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