2023.12.5.Tue
- 株式上場
弁護士は株式上場をどのようにサポートしてくれるのか
2023年12月1日に日本M&Aセンターとの共催で株式上場に関するセミナーをいたしました。その際の内容を改めてコラムにまとめてみたいと思います。
株式上場支援のバックボーンについて
まず、私が所属する如水法律事務所は、如水グループの一員として活動する法律事務所であり、如水グループは、監査法人、税理士法人及び社会保険労務士法人を有する専門家士業の集まりです。
上場会社の監査においては、上場会社等監査人名簿に登録が認められている監査法人を選定することが必要となりますが、この上場会社等監査人名簿に登録されている監査法人のうち、福岡県内に本拠地を置いている監査法人は、如水グループの如水監査法人だけです。
また、如水法律事務所や如水税理士法人、如水社会保険労務士法人もそれぞれの専門分野で上場会社や上場を目指す会社の支援を行っております。
私も、証券会社の公開引受部で上場支援を行っていた経験もあり、最近では、上場会社や上場を目指す企業の社外役員も務めているため、その経験も活かしながら法的な支援を中心に株式上場支援を行っております。
上場準備における弁護士のサポートとスケジュール
株式上場で弁護士がサポートする場面としては、
① 顧問弁護士として日々の契約業務や議事録作成等のサポート
② 社外役員として取締役会や他の委員会での活動
③ 株式上場に向けた法務DDの実施
が主なものとして挙げられます。
まず、①の顧問弁護士としての活動については、上場を目指す会社では契約書のチェック体制の整備、取締役会や株主総会議事録の整備、新たなビジネスモデルの適法性のチェック、コンプライアンス体制の確立などのサポートをしています。
特に、コンプライアンス体制の確立については、どの程度の体制確立が必要かという株式上場の肌感覚も重要になりますので、日常的な相談をしている弁護士と別に、株式上場に向けた支援をする弁護士も顧問弁護士につけるということもあります。
場合によっては、証券会社などの要望で、会社が抱える特定の法的問題に関する意見書を作成する必要もありますが、その際には、意見書によって証券会社等の懸念事項が払しょくされるのかどうか、証券会社等の問題意識、会社の対応状況、法的評価などを適切に記載する必要があります。
次に、②の社外役員についてですが、コーポレートガバナンス・コードの中でも、会計士や弁護士といった専門家を社外役員として入れることの重要性が記載されており、実際にも法的な観点からの監督を行うという趣旨で弁護士を社外役員(取締役又は監査役)として入れている会社が増えてきています。
社外役員としての活動は取締役会(や監査役会)での発言が主ですが、会社によっては、任意にリスクガバナンス委員会や報酬委員会、関連当事者取引委員会など各社の課題に応じた委員会を設定することもあり、その中での問題点の指摘というのも弁護士の役割として重要になっています。
最後に③の株式上場に向けた法務DDでは、
ビジネスモデルが適法か、
株式の発行や譲渡などが適切に行われているのか、
契約管理体制や契約内容に問題がないか
下請法などの業法違反がないか、違反を防止する体制が整っているか、
などについて確認を行い、その報告を行います。
場合によっては、指摘された課題の解決に向けた取り組みについて、そのままサポートするということもあります。
それぞれのサポート内容について弁護士が関与する時期によって若干のタイミングは異なりますが、主には上場申請を行う2期前くらいに関与するケースが多いかと思います。
まず、①の顧問弁護士はどのタイミングにおいてもつけることはできますが、通常は申請を行う2期前くらいからコンプライアンス体制や議事録の整備などに注意をしていきますので、同じタイミングで適切な顧問弁護士を探すケースが多いです。
次に、②の社外役員については、2期前から社外の役員を入れて、会社へのけん制機能を高めていき、1期前には社外役員の割合を増やして、さらにけん制機能を高めていく、というのが一般的ですので、上場申請の1期ないし2期前というタイミングでサポートをすることになります。
最後に③の株式上場に向けた法務DDは、主幹事証券会社の依頼で、法務DDを行い、法務上の課題を洗い出すということがあり、通常は上場申請の2期前に行って、期中に改善を行い、申請の1期前に改善した状態で運用を行い、申請期に臨む、というのが理想的なスケジュールです。
上場準備会社が実際につまずきやすいポイント
上場準備会社がつまずきやすいポイントとしては、まず、業法への注意が不十分になっていることが挙げられます。
たとえば、下請法については、そもそも下請法が適用される取引相手がだれかという点が把握できていないということも多くみられますし、下請法に適した契約書など書面の作成がなされていないこともあります。
また、法改正に合わせた規程の改定がなされていないということもよくありますし、取締役会議事録において、利益相反取引について、当該利害関係を有する取締役が審議と決議から外れた内容の議事録が作成されていないということもよくあります。
そういったことが起きないように、日ごろから議事録の作成も含めて弁護士がサポートするということが重要ですし、仮に、そういった問題が起きた場合に、どのように問題点を治癒すればいいのか、ということについてのサポートも弁護士の重要な仕事の1つです。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。