2023.10.31.Tue
- M&A
法務DDの目的
はじめに
法務DDの目的は何でしょうか。
主には以下のようなものが考えられます。
① M&Aを進める上で障害となる法律上の問題点がないか
② 対象会社の買収価格に影響を与える問題点がないか
③ その他改善が必要な問題点がないか
また、このような目的のために調査をする過程の中で、取引先や契約内容、資産の整理が行われることによって対象会社の情報の整理がはかられることもあります。
①M&Aを進める上で障害となる法律上の問題点がないか
法務DDを行っていて、多く見ることではありませんが、M&Aの遂行上の障害となる事由が発見されることがあります。
たとえば、株式譲渡のスキームの場合に、事業上重要な契約について、対象会社の株式譲渡がなされ、株主が変更されることが解除事由となっていることがあります。このような場合には、事前に相手方に対して、解除権を行使しないことを確約してもらうなどの対応を求めることもあります。
また、事業譲渡のスキームの場合に、重要な許認可の再取得が必要となる場合に、その許認可の取得ができるか不明な場合などには、株式譲渡にスキームを変更することで許認可の再取得の問題が生じないようにできないか、などについて検討することもあります。
②対象会社の買収価格に影響を与える問題点がないか
また、①ほどの重要な問題でないにしても、それなりに重要な取引について解消の可能性が発見されたり、販売している製品に不良品があって、裁判で損害賠償請求をされていたり、労務DDの結果、多額の未払い残業代が見込まれることなどがあります。
このような場合には、当初想定していた買収価格を減額したり、クロージング後に問題が顕在化した場合にその問題によって生じた損害額を補償する条項を入れたり、といった対応の検討が必要となります。
買収価格の減額ではなく、補償条項によって対応するという場合には、補償条項を発動した場合に、売主に補償金を支払う資力があるかどうかという問題も生じます。
③その他改善が必要な問題点がないか
その他、下請法など業法違反がないかや、コンプライアンス上問題がないかどうか、たとえば、ハラスメントが蔓延するような状況がないか、など買収価格には反映しにくいものの改善策が必要となる事項やレピュテーションリスクを招く事由が発見されることもあります。
法務DDは、財務DDや税務DDと比べると優先度が低くなりがちですが、上で書いたようにスキームの遂行に大きな問題を生じさせる事由など、大きな問題点の発見につながることもあります。ぜひM&Aの検討の際には、法務DDについてもご留意ください。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。