優良誤認表示と有利誤認表示
このコラムでは、景品表示法の優良誤認と有利誤認のうち、優良誤認について説明していきます。
優良誤認と有利誤認、似たような言葉で区別がつきにくいと思います。
それぞれ、どのようなものかというと、
優良誤認とは、
商品の内容について
① 実際のものより著しく優良であると示す表示
② 事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示
を指すとされています。
たとえば、国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、松坂牛など国産ブランド牛肉であるかのような表示を行うことなどがこれにあたります。
一方、有利誤認とは、
商品又は役務の価格その他の取引条件について、
① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
② 当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
を指すとされています。
たとえば、他社商品と同じくらいの容量しかないのに、他社商品の2倍の容量と表示することなどがこれにあたります。
優良誤認表示とは
今回はこのうち、優良誤認表示について書いていきたいと思います。
優良誤認表示のポイントは、「著しく優良」であるかどうかです。「著しく」という制限がついている理由は、一般に広告・宣伝活動も多少の誇張が行われるものであるということは共通理解としてあるという点にあります。
また、「著しく優良」かどうかの判断は、業界の慣習や事業者の認識によるのではなく、一般の消費者の誤認を招くかどうか、という視点で判断するという点には注意が必要です。
たとえば、着物のレンタルに関する優良誤認の事例として、「フルセット」として表示をしていたものの、帯については別であったことが消費者に誤認を招くとして優良誤認にあたるとされた事例があります。着物業界の慣習としては、着物と帯は別という認識があったことに起因するものともされていますが、実際にレンタルをする消費者からすると、そのようなことは分からないのが通常だと思います。 このように、広告表示を行う際には、知らず知らずのうちに、業界の慣習に沿った表示をしてしまっていないか、消費者の目線で見て誤解を招くことがないか、確認が必要です。
実際に気になるのは、どのような表示を行ったら「著しく優良」と誤認される表示になるのか、という点だと思います。もともと、「著しく優良」という言葉自体が非常に幅のあるものであるため、明確な基準を出すことは難しいのですが、過去の違反例を見るのが分かりやすいと思います。
過去の処分例については、消費者庁のホームページに掲載がされています。
この中から、自社の業界に関係のありそうなものを見ながら、どの程度の表示をすると「著しく優良」にあたるのかということを見極めていく必要があります。
処分例を見ていくと、1社だけでなく同じような表示を行っていた企業に対してまとめて措置命令を出していることも多いことに気づくと思います。あの企業もこのような表示を行っているから、と安易に考えて表示をしてはいけないということを示す一例です。
不実証広告規制とは
また、優良誤認の注意点として、不実証広告規制というものがあります。これはどういうものかというと、商品やサービスについて著しく優良である旨の表示をしていた場合、その合理的な根拠資料の提出を求めることができ、その根拠を示す資料が提出されなければ、不当表示であったとみなすというものです。そして、その資料の提出期限は15日後と短いため、資料の提出を求められてから新たに実験をしようとしても間に合いません。このように提出期間が短い背景には、著しく優良である旨の表示をしている以上、表示を行っている時点でその根拠をもって行っているはず、という価値判断があるものといえます。
実際の処分例でも、不実証広告規制によって、合理的な根拠を提出できなかったということで処分されている例も多数ありますので、広告表示の根拠がしっかりとあるのかどうかということの確認も必要です。
では、どのような資料を出せば合理的な根拠を示したことになるのでしょうか。
これについて、公正取引委員会が平成15年10月28日に出した不実証広告ガイドラインにおいては、
① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
の2つの要件が必要であるとしています。
また、消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏づけとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観的が十分に確保されていることが必要とされています。
実際の処分例でも、モニター数不足やモニターに社員などが含まれていることを理由として客観性が否定された例もあるため、体験談やモニターの意見等を根拠とする場合には、これらのことにも注意が必要です。
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テレビやインターネットなど、様々な広告表示を目にする機会が多くあります。
最近ではテレビCMやチラシだけでなく、インターネットメディアの発達によって、インスタグラ ムやYouTubeなど、今までとは違った広告手段も増えてきています。
事業者の方も自社の製品やサービスをアピールするために、様々な宣伝活動を考えているものと思います。
では、どのような宣伝活動であれば問題がないのか、考えたことはあるでしょうか。
文字にしなければ大丈夫、など思っていませんか。
実は、こういった宣伝活動・広告表示に関するルールを定めたものの1つとして景品表示法(正確には、不当景品類及び不当表示防止法、という長い名前です。)といった法律があります。
この景品表示法という法律は、不当表示に関する規制と過大な景品類の提供に関する規制とを定めています。
規制の対象となる表示にはどのようなものがある?
まず、規制の対象とされる表示というものが、どのようなものなのか、という点に注意が必要です。
これについては、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの」とされています(景品表示法2条2項)。
そして、告示の中で表示が具体的に示されています。チラシとかパンフレットに記載されているものについては、規制対象になりそう、と予想がつくかもしれません。
規制の類型にはどのようなものがある?
次に景品表示法でどのような表示が禁止されているかですが、これは大きく3つの類型があります。
① 優良誤認表示
② 有利誤認表示
③ 商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、内閣総理大臣が指定するもの
です。
優良誤認と有利誤認、似ていますがどのように違うのでしょうか。
また、どのような表示を行った場合に、それぞれの場合に該当してしまうのでしょうか。
この具体的な内容については、別のコラムで、具体例や処分例なども踏まえて説明をしていく予定です。言葉だけではなかなか理解が難しいこともありますが、具体例や処分例を見ていくことで、このような表示はしてはいけないということが分かってくると思います。
全体に共通することとしては、一般消費者に誤認されるおそれのある表示で、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示について禁止をしているということです。
一般消費者とは?
一般消費者については、一応の常識のある者をさし、一般平均人の理解よりもレベルを下げた段階でとらえられているとされています。本によっては、10人中7,8人が誤認しなかったとしても、残りの2,3人が誤認して、その誤認がある程度やむを得ない場合には、表示に問題があったといえるとするものもあり、表示の内容については、誤認を招かないか、多方面から検討を行う必要があります。
特に、特定の業界に属している人からすると常識と思っていることであっても、一般消費者にとっては常識ではないということはよくあります。この場合に、この業界では当たり前だからと言っても通用しません。しかし、業界に属していると、業界の常識と一般消費者の常識の区別がなくなってしまいますので、この点はしっかりと注意してください。
違反したらどうなる?
では、違反したらどうなるのでしょうか。
不当な表示を行っているとの疑いがある場合、消費者庁が関連資料の収集や事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は事業者に対して弁明の機会を付与した上で、一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことを命じる「措置命令」を行います。
また、不当表示の類型によっては、課徴金という金銭の納付が命じられることもあります。
違反した場合の具体的な処分の内容などについても今後コラムで説明していく予定です。
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スポンサー契約
スポーツチームとのスポンサー契約とは、
「企業などがスポーツチームにスポンサー料として一定の金銭その他の経済的・物的支援を行う契約」です。
ポイントとしては、「経済的」だけでなく「物的」という言葉も含み、金銭だけでなく物を提供する場合もスポンサー契約に含まれており、スポーツチームはこうした金銭や物の提供を受けることができます。
一方、スポンサーとなった企業は、スポンサー契約の内容に応じてスポーツチームのスポンサーであることを公表したり、自社の商品にスポーツチームのロゴを掲載したりなどすることで自社のイメージ向上を図ります。
では、具体的にスポンサー契約にはどのようなことを定めればよいでしょうか。
まず、
①スポンサー料がいくらか(物品などの提供であれば、何を提供するのか両者の間で齟齬が生じないように特定しておく必要があります。)、
②スポンサー料の引き換えとしてスポンサー企業が得られる権利が何か
を定める必要があります。
たとえば、チームの名称やロゴ、キャラクターをスポンサー企業の販売促進活動に利用できることなどについて定めたりしますし、チームに所属する選手の名前や写真などが利用できる場合もあります。
ただし、選手の写真などを使う場合は写真の著作権や選手の肖像権などの問題も別途生じますので、スポーツチームとの間で確認を行う必要があります。スポーツリーグによっては、リーグが選手の肖像権などについて一定の権限を有する場合もありますので、リーグの規約などについて確認する必要もあります。
また、チームの名称やロゴなどの利用をスポンサーに認める場合には、スポンサーでない者が利用することがないように商標権の取得などについても対応を検討する必要があります。
③契約期間
については、通常はリーグの期間と一致することが多いかと思います。
一方で、スポーツイベントなど単発のものであれば、そのイベントの期間に合わせて契約期間を設定することとなると思いますが、イベントが延期となった場合に、契約期間も延長することや中止になった場合に、契約をどうするのか(スポンサー料を返還するのか、返還の割合をどうするのかなど)についても定めておく必要があります。
また、スポンサー企業からすると、
④同一業種について一企業のみがスポンサーとなれるのか(独占的スポンサーと呼ぶ場合もあります。)
どうかも興味の対象となることがあります。
多くの企業にスポンサーになってもらうためには、同一業種のスポンサーを限定しない方がスポーツチームにとっては良いですが、スポンサー企業との長期的な信頼関係を維持するために、独占的スポンサーの是非についても検討しておくとよいでしょう。
選手の肖像権・パブリシティ権
肖像権とは、法律の明文の規定はないものの
「みだりに自己の容貌等を撮影されないこと、また、自己の容貌等を撮影された写真をみだりに公表されないことについて、法律上保護されるべき人格的利益」
として解釈上認められているものです。
この肖像権に似た概念で、パブリシティ権というものもあり、
これは、個人の氏名や肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利を指します。
スポーツ選手の肖像利用にあたっては、肖像権及びパブリシティ権について配慮を行う必要がありますが、商業的な利用においては、特にパブリシティ権を意識する必要があります。
パブリシティ権が問題となる類型としては、
① 写真集やプロマイドなど肖像を鑑賞の対象となる商品に使用した場合
② グッズなど商品の差別化のために肖像を使用した場合
③ CMなど商品の広告として肖像を使用した場合
が挙げられており、
「専ら」肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものといえるかどうか、
が判断基準とされています。
スポーツビジネスとの関係では、グッズに選手の肖像をプリントしたり、選手が広告に出たり、ということが従前からパブリシティ権の問題としてとらえられてきましたが、技術の進展に伴い、NFTとして発行されるデジタルトレーディングカードなどもパブリシティ権侵害の問題が発生すると考えられています。
これまで日本国内でもスポーツ選手のパブリシティ権が問題となった裁判例もあり、有名なものとしては、「一本足打法」を思わせる片足を上げた野球選手と「王貞治」「800号記念」などの文字を表示したメダルの製造・販売を禁止した王貞治記念メダル事件などがあります。
選手のパブリシティ権や肖像権は、本来的には選手自身に帰属するものですが、プロスポーツでは、選手が所属する球団や競技団体と契約を結ぶ際に、その一部または全部を譲渡または許諾することが多くあります。これは、球団や競技団体が選手の肖像権を利用して宣伝や販売促進を行うことで、スポーツの普及やファンの獲得に貢献するという考え方に基づいています。
例えば、プロ野球では、選手が所属球団と締結する統一契約書によって、球団が指示する場合には、選手の肖像利用に関する権利がすべて球団に帰属することなどが定められています。
同様に、Jリーグでは日本サッカー協会選手契約書で、バスケットボールのBリーグでは、選手統一契約書で、選手の肖像等に関する権利をクラブや協会、リーグが利用できるような定めが設けられています。
選手活動外のもの、たとえば、スポンサー企業の広告やCMなどに出演する場合であっても、契約書上選手が所属するチームが協会等の承諾が必要となることが一般的になっているため、注意が必要です。
スポーツの放映権
スポーツの放映権という用語を耳にすることがありますが、厳密には「放映権」について定義した法律はありません。一般的には、スポーツの試合やイベントをテレビやインターネットなどで放送する権利のことを指します。
では、放映権の根拠は一体どこにあるのでしょうか。
著作権が真っ先に思い浮かびそうですが・・・
著作権法では、法律上保護される著作物について「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義していますが、スポーツは身体活動であって、思想や感情を創作的に表現するものではありませんし、スポーツ選手も実演家としての著作隣接権を有するとはいえないため、スポーツやスポーツ選手が純粋にスポーツを行う場面では、著作権法の保護が及ばないことになります。
そのため、法律上の根拠については、いくつかの見解がありますが、試合会場の管理権を有する者から機材を持ち込むことについて許諾を得る必要があるという考えから、施設管理権を根拠とする見解が支配的です。
ただし、実際上は、放映権が問題となるような大会においては、選手やチーム、リーグ間での契約等によって、放映権の許諾について明確に規定がされているため、その規定に基づいて放映権が許諾されることとなっています。
例えば、日本プロ野球では野球協約で各球団がホームゲームの放送権を有することが規定されています。また、パ・リーグではインターネット放送に限って6球団が共同して設立した会社に放映権を一括管理させて、「パ・リーグTV」の放送を行っています。一方、JリーグやBリーグでは、各チームではなく、リーグがすべての公式戦に関する放映権を保有するものとされており、スポーツによって放映権の管理方法が異なっています。
上述のようにスポーツそれ自体が著作物等に当たらないとしても、スポーツの試合を撮影した映像は、カメラアングルやカメラワーク等に創作性が認められるため、著作物として保護されることが通常です。
そして、通常は、映像の制作について全体的に統括した者が著作者として、著作権を取得することとなりますが、契約によって著作権が譲渡されていることもあるため、映像の利用を検討している場合には、著作権者が誰であるかについては十分注意する必要があります。
なお、
① 営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けず、
② 通常の家庭用受信装置を用いている場合
については、著作権者の許諾なくして、受信装置を用いて著作物を公に伝達することができる(著作権法38条3項)ものとされており、同規定に基づいて、
スポーツバーに家庭用のテレビを設置して、来店者に放送中のスポーツ映像を見せる
ということも行われています。
ただし、どこまでが「通常の家庭用受信装置」なのかという判断は難しいため、悩まれたら専門家にご相談されてください。
チケット不正転売禁止法
人気のコンサートやスポーツイベントなどのチケットについて、業者や個人が買い占めて、オークションやチケット転売サイトなどで高額で転売するということが社会問題化しています。
2023年8月には、歌手で俳優の福山雅治さんのコンサートで、転売で取得したチケットによる入場は認めないとともに、チケットを転売した人及び転売されたチケットを取得した人の双方をファンクラブから永久退会させるということがニュースになっていました。
このようにチケットの転売について厳しい姿勢をとる背景には、転売を行う人が存在することによって、本当にチケットを取得してイベントに参加したい人が定価を超えた高額な代金を支払わなくてはならなくなることが挙げられます。
このような社会情勢から、チケットの転売に対処するために、2019年6月に「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称:チケット不正転売禁止法)が施行されました 。
これはどのような法律かというと、「特定興行入場券」についての不正転売(高額で転売することや偽造・変造すること)を禁止し、違反者には罰則を科すというものです。これに違反した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科されることがあります。
そして、どのようなチケットであれば、「特定興行入場券」に当たるかというと、不特定または多数の者に販売され、かつ、次の①から③のいずれにも該当する芸術・芸能・スポーツイベントなどのチケットを指すとされています。
① 販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明記し、その旨が券面に記載されていること
② 興行の日時・場所・座席(または入場資格者)が指定されたものであること
③ 座席が指定されている場合、購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレスなど)を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること
①の記載例としては、「主催者の同意なく、有償で譲渡することは禁止します。」といった記載が挙げられます。
③の記載例としては、「この入場券は、購入者の氏名及び連絡先を確認した上で販売されたものです。」といった記載が挙げられます。
チケットを扱う興行主の立場からすると、不正転売禁止法の適用対象とするためには、上の①から③の要件を満たすように、チケットの記載内容に注意をする必要がありますし、急用や急病で行けなくなった人のためにリセールサイトの準備などについても配慮する必要があります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。