令和6年10月1日から施行された景表法改正のうち、今回は確約手続きについて説明いたします。
1 確約手続きの内容と流れ
確約手続とは、不当表示または景品規制違反の疑いのある事業者から、
①違反被疑行為やその影響を是正するための是正措置計画を提出させ、
②その計画が是正措置として十分であり確実に実施されると見込まれると消費者庁が認定した場合、
違反被疑行為に対する措置命令や課徴金納付命令を行わないこととする制度のことです。
確約手続は、消費者庁が違反被疑行為について、確約手続の対象とすることが適当と判断した場合に、違反被疑行為の概要等を記載した書面を事業者に通知(確約手続通知)することにより開始することとなっています (改正景表法26条、30条)。
通知を受けた事業者は、確約手続通知を受けた日から60日以内に、是正措置の認定を申請する必要があります(改正景表法27条1項、31条1項)。
ただし、消費者庁が公表した確約手続運用基準の記載では、「確約手続をより迅速に進める観点から、消費者庁が確約手続通知を行う前であっても、違反被疑行為に関して調査を受けている事業者は、いつでも、調査を受けている行為について、確約手続の対象となるかどうかを確認したり、確約手続に付すことを希望する旨を申し出たりするなど、確約手続に関して消費者庁に相談することができる」とされております。
そのため、実際には、確約手続通知を受ける前段階で、消費者庁と事業者とで協議を行った上で、是正措置計画の策定を開始するという運用が想定されています。
このような中で事業者から提出された是正措置計画が、違反被疑行為やその影響を是正するために十分かつ確実なものであると消費者庁が認定すれば、措置命令や課徴金納付命令が行われないこととなります(改正景表法28条本文、 32条本文)。
もちろん、認定された是正措置計画に従って是正措置が実施されないときや虚偽または不正の事実に基づいて認定を受けたことが判明したときは、認定が取り消されて調査が再開され、措置命令や課徴金納付命令が行われます (改正景表法29条1項、 28条ただし書、 33条1項、 32条ただし書)ので誠実な対応が必要であることは言うまでもありません。
2 確約手続の対象
消費者庁が、確約手続の対象とするか否かの判断にあたっては、「確約手続により問題を解決することが一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があるか否かを判断する」とされています。
具体的には、「違反被疑行為がなされるに至った経緯、違反被疑行為の規模及び態様、一般消費者に与える影響の程度並びに確約計画において見込まれる内容その他当該事案における一切の事情を考慮し、違反被疑行為等を迅速に是正する必要性、あるいは、違反被疑行為者の提案に基づいた方がより実態に即した効果的な措置となる可能性などの観点から判断する」とされています。
このような記載からも、確約手続通知以前に消費者庁と事業者との協議が行われることが前提になっていることが窺えます。
確約手続の対象外となる場合として、以下の2つが確約手続運用基準において挙げられています。
① 10年以内に景表法に基づく法的措置を受けたことがある場合
② 違反被疑行為とされた表示について根拠がないことを当初から認識しているにもかかわらず、あえ て当該表示を行っているなど、悪質かつ重大な違反被疑行為と考えられる場合
3 是正措置の内容
確約手続運用基準では、典型的な是正措置として、以下の7つが挙げられています。
① 違反被疑行為を取りやめること
② 一般消費者への周知徹底
③ 違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置
④ 履行状況の報告
⑤ 一般消費者への被害回復
⑥ (アフィリエイターなど違反被疑行為の原因となった取引先との) 契約変更
⑦ (有利誤認表示に合わせた) 取引条件の変更
このうち①と②は 「措置内容の十分性を満たすために必要な措置の一つである」とされており、③と④は、「措置内容の確実性を満たすために必要な措置の一つである」とされているため、是正措置計画に必ず盛り込まなければならない事項です。
⑤一般消費者への被害回復とは、商品または役務の代金の全部または一部を消費者に返金することを意味し、これについては、「措置内容の十分性を満たすために有益であり、重要な事情として考慮することとする」とされ、必ずしも是正措置計画に盛り込まなくてもよいことになっていますが、十分性を判断するうえで重要な要素と位置づけられています。この記載からすると、特段の事情のない限り、返金措置を盛り込まない是正措置は不十分と判断される可能性が高いのではないかとされています。
なお、特段の事情としては、法律上、課徴金の納付を命じることができない場合(景表法8条 1項ただし書) が想定されており、具体的には、以下の2つの場合です。
(ア) 事業者が不当表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠ったものでないとき、
(イ)課徴金の額が150万円未満であるとき (売上が5000万円未満であるとき)
⑥と⑦は、「措置内容の十分性を満たすために有益である」とされており、重要度としては返金措置よりも一段下に位置づけられているが、それらの対応が実施可能であるにもかかわらず、是正措置計画に盛り込まない場合には、十分性が認められないおそれが高いと考えられています。
4 制度の利用について
確約手続が認定された場合、 認定確約計画の概要、認定に係る違反被疑行為の概要、確約認定を受けた事業者名その他必要な事項が公表されることになります。
その際、 景表法の規定に違反することを認定したものではない旨は付記されますが、一般消費者からは違反被疑行為を自認したと受け取られる可能性もあり、その内容が措置命令と同じように報道されてしまうと、措置命令を受けた場合と同様、企業のレピュテーションに大きな影響を与えるおそれがあります。 また、是正措置計画に返金措置が必要となると、 経済的な面でも確約手続を利用するインセンティブが低くなるという懸念もあります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
このコラムでは、2024年2月に実施した業務種別法務セミナー建設業編でお話した内容の前半のダイジェストとして、建設業法の概要について記載いたします。
建設業法とは
建設業法は、建設工事の請負契約の適正化等を通じて、建設工事の適正な施工を確保し、注文者の保護と建設業の健全な発達を促進することを目的にした法律です。
そのため、以下のような各種の規制がなされています。
なお、建設業法と似たような法律として下請法がありますが、下請法の制定時には既に建設業法が存在したため、重複して規制する必要がないとのことで、建設業については下請法の適用外とされています。
建設業法の主な規制
① 見積条件の提示
② 書面による契約締結
③ 不当に低い請負代金の禁止
④ 不当な使用資材等の購入強制の禁止
⑤ 著しく短い工期の禁止
⑥ 一括下請負の禁止
⑦ 検査・引渡し
⑧ 請負代金の支払
⑨ その他違反のおそれがある行為の禁止
⑩ 帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存
このような義務に違反した場合には、国土交通大臣や都道府県知事による監督処分がなされるおそれがあります。
監督処分について
監督処分の種類は以下のとおりです。
ⅰ 指示処分
法令違反等を是正するために監督行政庁が行う命令
ⅱ 営業停止処分
1年以内の期間から監督行政庁が決定します。
ⅲ 許可取消処分
これらの処分を行うかどうかは行政の裁量に委ねられている部分もありますが、国土交通大臣が監督処分を行う場合の統一的な基準として「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」が国交省から公表されており、不正行為等の内容・程度、社会的影響、情状等を総合的に勘案して判断するものとされています。
営業停止処分を受ける場合には弁明(書面審理)、許可取消処分を受ける場合には聴聞(口頭審理)の手続きが事前に行われ、処分がなされた際は官報や公報で公告されます。
建設業法の概要
以下、上で記載したうち、重要な①から⑥について解説いたします。
① 見積条件の提示
注文主は契約や入札の前までに工事に関する具体的な内容を提示し、見積もりのための一定期間を設けなければならないものとされています。
提示しなければならない主なものとしては、工事内容や工事着手及び完成の時期、代金の支払時期など、建設業法19条で定められた事項のうち、請負代金の額を除くすべての事項とされています。
さらに、ガイドライン上では、これらの見積依頼を書面で行うべきとされています。
適正な見積期間としては、工事1件の予定価格が
ⅰ 500万円に満たない場合 1日以上
ⅱ 500万円以上5000万円未満の場合 10日以上
ⅲ 5000万円以上の場合 15日以上
とされています。注意点としては初日不算入であるため、たとえば、4月1日に見積書を交付した場合、ⅰの場合は4月2日ではなく、4月3日が最短となる点です。
② 書面による契約締結
建設工事の請負契約の当事者は、建設業法19条1項により定められた事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。契約書面の
交付については、原則として工事の着工前に行う必要があります。
特に、「工事内容」は、請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、「○○工事一式」といったあいまいな記載は避けるほうが良いです。
公共工事については、中央建設業審議会が作成する公共工事標準請負契約約款に沿った契約が締結されています。民間工事においても、同審議会が作成する民間工
事標準請負契約約款又はこれに沿った内容の約款、又はこれに準拠した内容の契約書による契約を締結することが望ましいです。
書面での契約締結の方法には次の事項があります。
ア 請負契約書を交わす方法
イ 基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法
ウ 注文書・請書の交換のみによる方法
いずれの方法であっても、署名又は記名押印をして、相互に書面を交付するということが必要です。
FAXやメールにより注文書・請書を取り交わして契約を締結する方法や原本を1通作成して、その写しを一方当事者に交付する方法は認められていません。
工期に係る変更をする場合には、契約当事者である注文者および請負人は、原則として工期変更に係る工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は
記名押印をして相互に交付しなければなりません。
③ 不当に低い請負代金の禁止
「不当に低い請負代金の禁止」とは、注文者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を請負人と締結することを禁止するものです。
不当に低い請負代金の強制に該当するか否かは、
ア 注文者が「自己の取引上の地位を不当に利用」したか否か
イ 定められた請負代金の額がその注文した建設工事を施工するのに「通常必要と認められる原価」に満たないか否か
の2つの要件によって判断されます。
「自己の取引上の地位を不当に利用」してとは、取引上優越的な地位にある注文者が、請負人の選定権等を背景に、請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいいます。
「通常必要と認められる原価」は、当該工事の施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格をいい、請負人の実行予算や下請け先、資材業者等との取引状況、さらには当該施工区域における同種工事の請負代金額の実例等により判断します。
④ 不当な使用資材等の購入強制の禁止
「不当な使用資材等の購入強制」とは、請負契約の締結後に、「注文者が、自己の取引上の地位を不当に利用して、請負人に使用資材もしくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害すること」をいいます。
⑤ 著しく短い工期の禁止
建設業法19条の5は、「注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない」と定めています。
「発注者・受注者ガイドライン」及び「元請・下請ガイドライン」では、「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」とは、単に定量的に短い期間を指すのではなく、「工期基準」等に照らして不適正に短く設定された期間をいうとされています。
請負契約ごとに「工期基準」等を踏まえ、見積依頼の際に注文者が請負人に示した条件、請負人が注文者に提出した見積もり等の内容、締結された請負契約の内容、当該工期を前提として請負契約を締結した事情、請負人が「著しく短い工期」と認識する考え方、注文者の工期に関する考え方、過去の同種類似工事の実績、賃金台帳等をもとに総合的に勘案したうえで、個別に判断します。
⑥ 一括下請負の禁止
いかなる方法をもってするかを問わず、建設業者が受注した建設工事を一括して他人に請け負わせること、建設業を営む者が他の建設業者が請け負った建設工事を一括して請け負うことが禁止されています。
一括下請とは、元請負人がその下請け工事の施工に実質的に関与することなく、次のいずれかに該当する場合をいいます。
ア 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
イ 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の事業者に請け負わせる場合
「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいい、具体的には元請負人、下請負人が次の役割をそれぞれ果たす必要があります。単に現場に技術者を置いているだけでは「実質的に関与」したとはいえません。
発注者から直接建設工事を請け負った建設業者(元請負人) は、次に掲げる事項を全て行う必要があります。
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・安全管理
・技術的指導
・その他(発注者等との協議・調整など)」
元請負人以外の者が果たすべき役割(下請負人) は、次に掲げる事項を主として行う必要があります。
・施工計画の作成
・工程管理
・品質管理
・安全管理
・技術的指導
・その他(施工確保のための下請負人調整など)
民間工事の場合、元請負人があらかじめ発注者から一括下請負に付することについて承諾を得ている場合は、一括下請負の禁止の例外とされていますが、一括下請負を行う者が、一括下請負に付する前に書面で発注者から承諾を得る必要があります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
前回に引き続き、製造業で問題となる点をQ&A方式でご説明します。
3-1 下請事業者との契約
Q:下請法の適用対象について教えてください。
A:下請法が適用されるかどうかは、契約内容や資本金額によります。
Q:下請法上の義務、禁止行為は何ですか?
A:下請法上の義務として、①発注書面の交付義務、②支払期日(役務の提供から60日以内)を定める義務、③書類作成・保存義務、④遅延利息(年14.6%)の支払義務が挙げられます。
下請法上の禁止行為は、代金の減額、買いたたき(下請業者側に帰責事由がある場合を除く)、受領拒否、返本、不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(下請業者側に責任がある場合を除く)等が挙げられます。
※下請法については、過去のコラムでも取り扱っておりますので、そちらも併せてご参照ください。
3-2 金型の製造委託
Q:金型の製造委託において、どのような点に配慮すべきですか?
A:金型の設計について特許権や実用新案権、意匠権による保護を受けようとしても、複数の要件を備えることが必要となります。また、金型自体は市場に流通しないため、流通製品から金型構造を推測できても、最終的に特許権等侵害を立証することは困難です。
著作権についても、「文芸・学術・美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1号)に相当するかはケースバイケースであるため、著作物と認められるかもケースバイケースということになりますし、金型やノウハウそのものは著作権の対象とはなりません。
したがって、知的財産権での保護はあまり現実的ではなく、不正競争防止法上の保護が受けられるように、ノウハウが含まれた金型図面等を営業秘密として管理することが考えられます。
Q:金型の製造委託について、発注企業側の留意点はありますか?
A:金型の製造を下請事業者に委託する場合には、下請法の適用があります。
金型図面などの無償提供その他図面開示の依頼をすることは、下請法に抵触するおそれがあるため、別途適切な対価を支払って買い取ったり、発注内容に金型図面などを含むことを明らかにする必要があります。
また、下請企業に対して、長期間にわたり実際にはほとんど使用しない金型を無償または相当な対価で保管させたり、当初想定していないメンテナンスなどを一方的な都合で行わせることも、下請法に抵触するおそれがあります。
中小企業庁でも、金型取引における下請法違反を問題視しているため、下請法違反には注意をしてください。
4-1 派遣労働者・偽装請負
Q:労働者派遣とは何ですか?
A:労働者派遣とは、派遣元と派遣労働者の間に雇用契約があり、派遣元と派遣先との間に締結される労働者派遣契約に基づき、派遣元が派遣先に派遣労働者を派遣し、派遣先は派遣元から委託された指揮命令の権限に基づき、派遣労働者を指揮命令するものです。
Q:派遣労働者を用いる場合の注意点はありますか?
A:派遣労働者を用いる場合には、派遣元企業が労働者派遣法上の許可を受けた事業者であることの確認をしましょう。
また、事業所単位と個人単位の派遣期間制限の管理を行うことも重要です。
事業所単位と個人単位の派遣期間制限は、いずれも3年が上限とされていますが、事業所単位は要件を満たせば更新が可能です。
Q:偽装請負とは何ですか?
A: 請負は一見すると労働者派遣と似ていますが、発注者と請負労働者の間に指揮命令関係がないという違いがあります。偽装請負は、形式的には請負契約ですが、発注者と請負労働者の間に指揮命令関係があり、実態としては、労働者派遣であるものを指します。
労働者派遣の場合には、労働者派遣法や関係法令により派遣先企業としての諸々の義務を課されることから、偽装請負を行う事業者が増えたという背景があります。
偽装請負と認められた場合じゃ、行政指導や勧告をはじめとする制裁を受けることになります。
Q:偽装請負とみなされないように注意すべきことを教えてください。
A:
①請負会社の労働者に直接業務に関する指示をしない
②業務時に着用する制服などは請負事業主に用意してもらう
③労働法令に基づく労働者に対する雇用主としての責任は請負事業主が負う
④業務遂行にあたり、発注者が所有する機械などを請負事業者に使用させる場合は、賃貸借契約を締結し、管理に関する責任分担を定めておく
といった点に注意してください。
4-2 不祥事対応
Q:会社に求められる不祥事対応を教えてください。
A:
①事実調査
証拠の確保、事実調査担当者の選定、ヒアリング、不正関与従業員に対する処分、第三者委員会の設置と公表などを行います。
②開示、公表、マスコミ対応
不祥事が発覚しても、直ちに開示・公表を行う義務は生じないのが原則です(上場会社の場合、役員・従業員による不正行為が適時開示事由に該当する場合があります。)
マスコミ対応を誤ると、不正行為の発覚以上に企業にレピュテーションリスクを増大させてしまうので、周到な準備と臨機応変な対応が求められます。
③取締当局や監督当局への対応
不祥事について自主的に当局に報告すべきか、いかなる報告内容とし、いかなる証拠を提出すべきかを検討します。ここでは、主張すべきことは主張しつつも、調査に全面的に協力し、証拠隠滅や調査妨害を疑われる行為をしないことが重要です。
④株主、監査法人などへの対応
対株主では、株主総会での質疑応答や個別問合せ、株主代表訴訟といった裁判に発展する可能性があります。
対監査法人では、不祥事の内容によっては上場廃止のリスクに直面しかねないため、有価証券報告書等の訂正等の処理が可能かどうかなどの確認をする必要があります。
Q:不祥事を予防するための取組みはありますか?
A:
①不正の芽の発見と対応
内部通報制度の仕組みを機能させる、業務改善を横展開する(同種のコンプライアンス違反が他の部署にも存在していないかのチェック)などを行います。
②コンプライアンスを重視する意識形成
経営層がコンプライアンスは重要であると口にしていても、普段からコンプライアンスを意識した行動をとっていないと、部下は経営層に忖度した態度をとり、コンプライアンスを意識しなくなるおそれがあります。
そこで、経営陣がコンプライアンスを重視した行動をとる、コンプライアンス違反事例を報告・共有するという意識を定着させるなどの取組みが必要です。
③不正の要因の解消
不正の機会、不正の動機、不正を正当化させる事情の3つが揃うと不正が起こるとされており、この3つは「不正のトライアングル」とも言われています。そこで、これらの3つの要因を解消することが重要です。
不正の機会の解消とは、不正を可能・容易にする客観的な環境をなくすことです。対策の例として、部署間の牽制や適宜の監査がなされるような体制とし、適宜の人材異動を実施するなどが挙げられます。
不正の動機の解消とは、従業員が不正行為をするしかないという考えにいたらないようにすることです。
例えば、売上目標・利益目標の達成や納期の遵守などについて従業員に過度のプレッシャーをかけないといったことです。
不正を正当化させる事情の解消とは、不正行為を正当化し、自ら納得させる事情(例:データを改ざんしても事故には直結しないから大丈夫、上司の命令だから…、長年このやり方でやってきたから…)をなくすことです。データ改ざんなどの不祥事は会社の価値を毀損し、取り返しのつかない結果を招くという認識や、上司の命令であってもコンプライアンスに反する場合は従ってはならないという認識を社内に定着させるといった取組みが効果的です。
4-3 ESG
Q:ESGって何ですか?
A: ESGとは、「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の3つの頭文字をとったものです。
国際社会で極めて大きな存在を占める企業が環境問題などを意識し「持続可能な成長」を行わなければ社会全体の持続的な発展・成長はないという強い問題意識に基づくものであり、これはSDGsにも共通します。
ESGやSDGsの課題に対応できていない企業であると判断された場合は、海外の大企業から取引を制限されてしまったり、投資家からネガティブな評価を受け、株価が下落するといったリスクがあります。
メーカーにとっての個別のコンプライアンス課題としては、紛争鉱物規制、奴隷労働・人身売買などの禁止といった規制が挙げられます。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
今回は製造業で注意すべきポイントについて、Q&A形式で説明したいと思います。
1―1 秘密保持契約
Q:秘密保持契約の原案をチェックするとき、どのような点に注意して検討すべきでしょうか?
A:相手方との取引実態や開示予定の秘密の重要性などを踏まえ、契約の目的、秘密情報の定義、開示先の例外、契約の有効期間などの条項について、慎重に検討することが必要です。ネットではたくさんの秘密保持契約書のひな型を見ることができますが、内容を確認せずに確認するのは避けましょう。
Q:秘密保持契約の目的で注意すべきポイントは何ですか?
A:目的の範囲が広すぎると秘密保持義務を課した意味が弱まる一方で、狭すぎると目的外利用になるケースが増えてしまうので、バランスが求められます。
Q:秘密情報の範囲は、どのように定めたらよいでしょうか?
A:自社が主な開示主体であれば、広く設定したほうが一般的には有利です。一方で、相手方が主な開示主体であれば、秘密の範囲を明確かつ限定するために「秘密」の記載などで特定を要するとしておくべきです。
Q:秘密保持契約の有効期間の定めで気をつけるべき点はありますか?
A:開示済みの秘密情報を保護するために始期と終期には注意してください。
契約を締結する前に秘密情報の受け渡しがある場合は、始期を契約締結時としてしまうと、契約締結前に受け渡しがなされた秘密情報が契約で保護されなくなってしまいます。
※過去のコラムでも、秘密保持契約書を取り扱っておりますので、そちらも併せてご参照ください。
1-2 1回限りの契約
Q:1回限りの契約でも、契約書を作成しないといけませんか?
A:契約は、一般的には申込みと承諾の意思表示の合致で成立するため、契約書の作成は必須ではありません。注文書と請書でも契約は成立します。
しかし、注文書に記載されている契約条項の内容を確認せずに請書を送付すると、その内容で契約が成立してしまうので注意が必要です。
注文書に規定しない事項については、民法または商法などの任意規定が適用されることになるので、自社にとってそれらの規定よりも有利な規程を盛り込むことができるかという観点で検討します。
下請法の適用がある場合には、書面の交付や支払期日の定めなど、別途義務が生じるので下請法の適用対象であるかには注意をしてください。
1-3 取引基本契約書
Q:基本契約書を取り交わす意義は何ですか?
A:同一の当事者間で反復継続して同種の取引を行う際には、特別の事情がない限り、あらかじめ定められた同じ内容で取引をすることが簡便です。
また、基本契約書を取り交わすことで、当事者が不特定多数の相手と取引を行う際に、一括して共通の対応をすることも可能となります。
個別の取引ごとに異なる条項については、取引時に注文書・請書または個別契約で定め、共通事項は基本契約書をあらかじめ取り交わしておくことで、個別の取引のたびに契約書を取り交わす手間を省くことができます。
Q:自社ひな型を作成する場合の留意点は何ですか?
A:法令などに基づく制限が課される場合がある点が挙げられます。
例えば、下請事業者との契約では、下請法の規制にも留意する必要があります。
あまりに自社に有利な条項にすると、相手方から多くの修正を求められ、契約交渉が長引いてしまうおそれもありますので、有利にすればするほど良いというわけではありません。
Q:相手方ひな型を用いる場合の留意点は何ですか?
A:自社に不利な条項が含まれていても、全ての条項を修正するのは困難なので、修正を求める条項に優先順位を付けて交渉に臨みましょう。
自社が対応できない点、受け入れるとリスクが大きい点など、修正が必須な条項のために、重要度の低い条項は譲歩するなどのバランスが求められます。例えば、管轄裁判所が自社から遠い場合であっても、日本国内である限り対応できないということは考えにくいため、優先順位は低くなるといえます。
Q:力関係の差が大きく、相手方のひな型を受け入れざるを得ない状況である場合には、どのような手段が考えられますか?
A:保険をかけてリスクに備えておいたり、仕入れた商品を顧客に売却している事業者であれば、顧客との間の基本契約書と同様の内容の基本契約書を仕入先との間で結ぶなどの方法が考えられます。
1-4 印紙税
Q:印紙税とは何ですか?
A:印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成する契約書や領収書などに課される税金で、印紙税法別表第一課税物権表に記載されている20種類の文書が課税対象です。
印紙税の負担者は、印紙税が課される文書を作成した人であり、原則として、「課税文書に記載された作成名義人」です。
印紙税法は、日本の国内法なので、その適用範囲は日本国内に限られ、課税文書の作成場所が国外であれば、印紙税は課されません。
Q:請負契約と委任契約はどのように区別しますか?
A:前提として、請負契約書は課税文書であり、委任契約書は不課税文書です。
契約書のタイトルではなく、実質的な内容からいずれにあたるかを区別しますが、委任契約であっても、受任者の報告義務の一環として、報告書の交付が必要とされる場合があるため、成果物の有無で区別をすることは困難です。
そこで、「仕事を完成することを約し」たかどうかについて、個別具体的に判断することになります。
2-1 知的財産権
Q:特許権の成立要件や効力について教えてください。
A:特許出願をし、特許庁における審査を経て特許査定され、特許料の納付をすることで、特許権の設定登録ができます。
特許権の登録がされると、特許庁により発行される特許公報により特許の内容が公開され、特許公報はインターネットなどで誰でも閲覧が可能です。
特許権者は発明品の製造・販売を独占することができ、第三者が特許権を侵害する行為をした場合には差止めや損害賠償請求をすることができます。
特許の内容が公開されることで、競合他社が製品開発時に特許の内容を回避させるなどといった事実上の抑制力もあります。
2-2 オープン&クローズ戦略
Q:オープン&クローズ戦略とは何ですか?
A:自社の技術について、技術内容が公開される特許として保護するのか(オープン戦略)、それとも秘密として管理してノウハウとして保護するのか(クローズ戦略)を決定するものです。
オープン戦略をとった場合、特許権の登録後は、特許公開制度により特許権の内容が公開され、模倣のリスクが発生します。また、特許権の効力は出願から20年なので、権利の有効期間満了後には第三者も合法的に特許権の内容を実施されるというリスクがあります。
一方でクローズ戦略をとり自社技術を営業秘密とする場合、市場が小さければ大きな利益は期待できないうえ、情報漏洩などに対する対策が必要となります。
これらを踏まえて、事業戦略に鑑みて、特許権登録をして独占・排他的効力を発生させるか、営業秘密として半永久的に秘匿するかを判断することが必要です。
Q:オープン戦略とクローズ戦略のいずれを採用すればいいか、判断軸はありますか?
A:他社の新規参入が見込まれない自社のコア技術については特許出願をせず営業秘密としてブラックボックス化し(クローズ戦略)、
他社の新規参入のリスクがある分野については他社に先んじて特許出願を行って競争優位性を確保し(オープン戦略)、
自社の製造キャパシティ以上に市場の拡大が見込まれる分野については特許権の積極的なライセンス・アウトによる市場の拡大とライセンス収益を実現することが望ましいです。
2-3 営業秘密
Q:不正競争防止法で保護される「営業秘密」の効果とその要件は何ですか?
A:「営業秘密」として保護されると、不正競争者に対する差止請求、損害賠償請求等ができます。
不正競争防止法における「営業秘密」とは、①有用性、②非公知性、③秘密管理性を全て満たすものです。
①有用性とは、その情報が客観的にみて、事業活動にとって価値があることです。
一般的には、非公知性・秘密管理性を満たす企業内の情報は、有用性も認められます。ただし、公序良俗に反する内容の情報は有用性が否定されます。
②非公知性とは、「当該営業秘密が一般的に知られた状態となっていない状態、又は容易に知ることができない状態」とされています。
リバース・エンジニアリング(既存の製品の分解や分析などを行い、その動作原理や製造方法、設計、仕様の詳細、構成要素などを明らかにすること)によって非公知性が欠如するかについては、「一般的な技術手段を用いれば容易に製品自体から得られるような情報」であれば非公知性を失うとされる一方、「専門家により、多額の費用をかけ、長期間にわたって分析することが必要であるもの」については非公知性が失われないとされています。
③秘密管理性は、3つの要件の中で最も重要とされています。
秘密管理性の判断において、判例の傾向としては、
㋐アクセス権者の限定・無権限者によるアクセスの防止(例:鍵のかかる棚に保管しておく、パスワードをかけておく)
㋑秘密であることの表示・秘密保持義務の設定
㋒組織的管理(㋐、㋑の措置が機能するように組織としての管理を行っていること)
の3つの管理を全て実行することが必要とされています。
2-4 職務発明
Q:職務発明制度について気を付けるべきポイントは何ですか?
A:前提として、会社は、従業員が行った発明を当然に特許出願できるわけではないため、特許を受ける権利を発明者から取得するなどしなければなりません。
あらかじめ従業員との契約ないし就業規則などに職務発明に係る特許を受ける権利の帰属について定めておけば、使用者は、職務発明に係る特許を受ける権利を、職務発明が完成した時点で原始的に会社に帰属させることができます。
発明報酬は、金銭に限らない相当の利益を与えることも可能です。しかし、確認の意味で譲渡証書などの書類を従業員から取得している会社や、金銭以外の報奨を追加していない会社も相当数残っているのが実情です。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
これまでのコラムでは景品表示法が表示行為についてどのような規制をしているのかについて説明をしてきました。
今回は、景品表示法に違反した場合にどのようなことになるのかということについて説明したいと思います。
措置命令
景品表示法に違反する不当な表示がなされた疑いがある場合、消費者庁は関連資料を収集を行ったり、事業者に対する事情聴取などの調査を行うことができます。
そして、その調査の結果、景品表示法に違反していると認められた場合は、事業者に対して弁明の機会を付与した上で、不当表示によって一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命じる措置命令を出すことができます。
措置命令では、一般的に、違反行為の差し止めが命じられるほか、一般消費者の誤認排除のための新聞広告、再発防止策の策定、同様の行為の禁止、措置命令に対する対応についての消費者庁への報告などが命じられます。この命令に違反した場合には、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金という罰則が定められています。
新聞の掲載については、日刊新聞2紙以上に社告を掲載するのが通常であり、この新聞掲載費用だけでも数百万円単位の支出になるとも言われています。
都道府県知事による措置
また、違反行為を迅速、効果的に規制できるようにという観点から都道府県知事も措置命令をするために必要があるときは、報告命令、立ち入り検査等を行って必要な調査を行うことができるとされており、その結果、違反行為があると認められるときは、事業者に対して行為の取りやめや再発防止に必要な事項を命じることができるものとされています。
課徴金制度
平成26年11月の景品表示法の改正によって、課徴金の制度が導入されました。
具体的には、景品表示法において定められている不当表示の類型のうち告示によって指定される不当表示の類型を除き、課徴金を賦課するものとされており、優良誤認表示行為及び有利誤認表示行為が対象となります。
不実証広告規制にかかる表示行為については、課徴金との関係では、一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出がない場合には、当該表示を不当表示と「推定する」(後から争える)という規定となりました。
細かいところですが、措置命令との関係では、不実証広告規制は「みなす」(後から争えない)という規定になっています。
これは、不実証広告規制に基づく資料提出期間を過ぎた後であっても、後から合理的な根拠を示す新しい資料が備わった場合には、課徴金との関係では、推定規定であるため、優良誤認表示に該当することについて争えるようにしているため、文言の違いが生じています。
課徴金の額
課徴金の金額は、対象商品・役務の売上額に一定の割合をかけることによって算定するものとされており、算定率は3%とされています。
対象期間として遡れる期間は3年間されています。また、事業者が違反行為であることを知らないことについて相当の注意を怠った者でないと認められるときには課徴金を賦課しないともされています。算定した金額が150万円未満の場合には、規模基準によって課徴金は賦課されません。
除斥期間としては、当該違反行為をやめてから5年経過したときには、課徴金を賦課しないものとされているほか、自主的に違反行為を申告した場合には課徴金の2分の1を減額するという制度もあります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
有利誤認
有利誤認とは、
商品又は役務の価格その他の取引条件について、
① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
② 当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
を指すとされています。
たとえば、他社商品と同じくらいの容量しかないのに、他社商品の2倍の容量と表示することなどがこれにあたります。
「価格その他の取引条件」とは、商品又は役務の内容そのものを除いた取引に関わる条件をいい、価格・料金のほか、数量、支払条件、取引に付随して提供される景品類、アフターサービス等が含まれるとされています。
また、「有利であると一般消費者に誤認される」とは、たとえば価格表示を例にすると、当該表示によって販売価格が実際と異なって安いという印象を一般消費者に与えることをいいます。
実際の処分例では、肉の日で当日表示価格より半額、という表示をしていたものについて、肉の日は通常日よりも表示価格を高く表示していたため、通常の半額よりも高い金額で販売していたという事案やメーカー希望小売価格が存在しないにもかかわらず、メーカー希望小売価格とする金額を表示して大幅に割引されているような表示をしたものなどがあります。
価格表示ガイドライン
有利誤認の最も典型的なものは価格表示に関するものですので、公正取引委員会が、価格表示ガイドラインというものを公表して、どのようなものが景品表示法上問題となるおそれがあるかについて明らかにしています。
一般的には、以下のような価格表示は問題になりうるので注意が必要です。
① 実際の販売価格よりも安い価格を表示する場合
② 販売価格が、過去の販売価格や競争事業者の販売価格等と比較して安いとの印象を与える表示を行っているが、例えば次のような理由のために実際には安くない場合
ⅰ 比較に用いた販売価格が実際と異なっているとき
ⅱ 商品又は役務の内容や適用条件が異なるものの販売価格を比較に用いているとき
③ その他、販売価格が安いとの印象を与える表示を行っているが、実際は安くない場合
二重価格表示
価格表示で問題となることが多いのが二重価格表示です。
価格表示ガイドラインにおいて、二重価格表示とは、「事業者が自己の販売価格を当該販売価格よりも高い他の価格を併記して表示するもの」と定義されています。
たとえば「当店通常販売価格550円のところ、本日限り、220円」と記載する場合などがその例です。
比較対象となる価格が表示されることで一般消費者の選択に資する面がある一方で、その価格表示が適切になされないと一般消費者に誤認を生じさせるという側面も持つため、適正な表示がなされることが求められます。
では、適正な表示といえるためには、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
まず、比較対象として使用する価格について、最近相当期間にわたって販売されていたと価格といえない場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格である等その内容を正確に表示しない限り不当表示に該当するおそれがあるとされています。
このように、比較対象となる価格の内容を正確に書くことでの例外対応もありえますが、販促活動の一環として比較対象となる価格を表示する場合には、そのような細かい内容を記載する例は少ないといえますので、最近相当期間にわたって販売されていた価格といえるためにはどのようにすればいいのか、という点が事業者としては気になるはずです。
これについて価格表示ガイドラインの考え方をまとめると、
① セール開始時点からさかのぼって8週間について検討をする
(販売期間が8週間未満の場合は当該期間について検討をする)
② 比較対象として用いたい価格での販売期間が、①の期間の過半を占めていること
③ セール開始時点の2週間前までに比較対象として用いたい価格で販売していること
という条件を満たす必要があります。
また、よくある相談として、「オープン特別価格」のような形で、販売実績がないが、その後の想定される通常価格との比較を行うことができるのか、という相談を受けることがあります。これについて価格表示ガイドラインは、将来販売価格を比較対象価格とする場合について、将来の価格設定は将来の不安定な需給状況などに応じて変動するものであることから、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合以外においては適切でないとしています。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
優良誤認表示と有利誤認表示
このコラムでは、景品表示法の優良誤認と有利誤認のうち、優良誤認について説明していきます。
優良誤認と有利誤認、似たような言葉で区別がつきにくいと思います。
それぞれ、どのようなものかというと、
優良誤認とは、
商品の内容について
① 実際のものより著しく優良であると示す表示
② 事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示
を指すとされています。
たとえば、国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、松坂牛など国産ブランド牛肉であるかのような表示を行うことなどがこれにあたります。
一方、有利誤認とは、
商品又は役務の価格その他の取引条件について、
① 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
② 当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
を指すとされています。
たとえば、他社商品と同じくらいの容量しかないのに、他社商品の2倍の容量と表示することなどがこれにあたります。
優良誤認表示とは
今回はこのうち、優良誤認表示について書いていきたいと思います。
優良誤認表示のポイントは、「著しく優良」であるかどうかです。「著しく」という制限がついている理由は、一般に広告・宣伝活動も多少の誇張が行われるものであるということは共通理解としてあるという点にあります。
また、「著しく優良」かどうかの判断は、業界の慣習や事業者の認識によるのではなく、一般の消費者の誤認を招くかどうか、という視点で判断するという点には注意が必要です。
たとえば、着物のレンタルに関する優良誤認の事例として、「フルセット」として表示をしていたものの、帯については別であったことが消費者に誤認を招くとして優良誤認にあたるとされた事例があります。着物業界の慣習としては、着物と帯は別という認識があったことに起因するものともされていますが、実際にレンタルをする消費者からすると、そのようなことは分からないのが通常だと思います。 このように、広告表示を行う際には、知らず知らずのうちに、業界の慣習に沿った表示をしてしまっていないか、消費者の目線で見て誤解を招くことがないか、確認が必要です。
実際に気になるのは、どのような表示を行ったら「著しく優良」と誤認される表示になるのか、という点だと思います。もともと、「著しく優良」という言葉自体が非常に幅のあるものであるため、明確な基準を出すことは難しいのですが、過去の違反例を見るのが分かりやすいと思います。
過去の処分例については、消費者庁のホームページに掲載がされています。
この中から、自社の業界に関係のありそうなものを見ながら、どの程度の表示をすると「著しく優良」にあたるのかということを見極めていく必要があります。
処分例を見ていくと、1社だけでなく同じような表示を行っていた企業に対してまとめて措置命令を出していることも多いことに気づくと思います。あの企業もこのような表示を行っているから、と安易に考えて表示をしてはいけないということを示す一例です。
不実証広告規制とは
また、優良誤認の注意点として、不実証広告規制というものがあります。これはどういうものかというと、商品やサービスについて著しく優良である旨の表示をしていた場合、その合理的な根拠資料の提出を求めることができ、その根拠を示す資料が提出されなければ、不当表示であったとみなすというものです。そして、その資料の提出期限は15日後と短いため、資料の提出を求められてから新たに実験をしようとしても間に合いません。このように提出期間が短い背景には、著しく優良である旨の表示をしている以上、表示を行っている時点でその根拠をもって行っているはず、という価値判断があるものといえます。
実際の処分例でも、不実証広告規制によって、合理的な根拠を提出できなかったということで処分されている例も多数ありますので、広告表示の根拠がしっかりとあるのかどうかということの確認も必要です。
では、どのような資料を出せば合理的な根拠を示したことになるのでしょうか。
これについて、公正取引委員会が平成15年10月28日に出した不実証広告ガイドラインにおいては、
① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
の2つの要件が必要であるとしています。
また、消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏づけとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観的が十分に確保されていることが必要とされています。
実際の処分例でも、モニター数不足やモニターに社員などが含まれていることを理由として客観性が否定された例もあるため、体験談やモニターの意見等を根拠とする場合には、これらのことにも注意が必要です。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
1日1回飲むだけでみるみるスリムな体形に!
通常価格10万円のところ、本日限り限定50名様に1万円で提供
テレビやインターネットなど、様々な広告表示を目にする機会が多くあります。
最近ではテレビCMやチラシだけでなく、インターネットメディアの発達によって、インスタグラ ムやYouTubeなど、今までとは違った広告手段も増えてきています。
事業者の方も自社の製品やサービスをアピールするために、様々な宣伝活動を考えているものと思います。
では、どのような宣伝活動であれば問題がないのか、考えたことはあるでしょうか。
文字にしなければ大丈夫、など思っていませんか。
実は、こういった宣伝活動・広告表示に関するルールを定めたものの1つとして景品表示法(正確には、不当景品類及び不当表示防止法、という長い名前です。)といった法律があります。
この景品表示法という法律は、不当表示に関する規制と過大な景品類の提供に関する規制とを定めています。
規制の対象となる表示にはどのようなものがある?
まず、規制の対象とされる表示というものが、どのようなものなのか、という点に注意が必要です。
これについては、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの」とされています(景品表示法2条2項)。
そして、告示の中で表示が具体的に示されています。チラシとかパンフレットに記載されているものについては、規制対象になりそう、と予想がつくかもしれません。
規制の類型にはどのようなものがある?
次に景品表示法でどのような表示が禁止されているかですが、これは大きく3つの類型があります。
① 優良誤認表示
② 有利誤認表示
③ 商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、内閣総理大臣が指定するもの
です。
優良誤認と有利誤認、似ていますがどのように違うのでしょうか。
また、どのような表示を行った場合に、それぞれの場合に該当してしまうのでしょうか。
この具体的な内容については、別のコラムで、具体例や処分例なども踏まえて説明をしていく予定です。言葉だけではなかなか理解が難しいこともありますが、具体例や処分例を見ていくことで、このような表示はしてはいけないということが分かってくると思います。
全体に共通することとしては、一般消費者に誤認されるおそれのある表示で、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示について禁止をしているということです。
一般消費者とは?
一般消費者については、一応の常識のある者をさし、一般平均人の理解よりもレベルを下げた段階でとらえられているとされています。本によっては、10人中7,8人が誤認しなかったとしても、残りの2,3人が誤認して、その誤認がある程度やむを得ない場合には、表示に問題があったといえるとするものもあり、表示の内容については、誤認を招かないか、多方面から検討を行う必要があります。
特に、特定の業界に属している人からすると常識と思っていることであっても、一般消費者にとっては常識ではないということはよくあります。この場合に、この業界では当たり前だからと言っても通用しません。しかし、業界に属していると、業界の常識と一般消費者の常識の区別がなくなってしまいますので、この点はしっかりと注意してください。
違反したらどうなる?
では、違反したらどうなるのでしょうか。
不当な表示を行っているとの疑いがある場合、消費者庁が関連資料の収集や事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は事業者に対して弁明の機会を付与した上で、一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことを命じる「措置命令」を行います。
また、不当表示の類型によっては、課徴金という金銭の納付が命じられることもあります。
違反した場合の具体的な処分の内容などについても今後コラムで説明していく予定です。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
※本コラムは2023年9月実施の顧問先企業向け動画配信の内容をもとに作成しております。
下請法のイメージ
それでは、下請法の概要について説明したいと思います。
下請法が適用されるかどうかについては、
① 委託者と受託者の資本金の関係をもとに、適用対象者になるのかどうか、
② 適用対象の取引に該当するのかどうか、
という2点をまず把握する必要があります。
その上で下請法の適用対象者になった場合に、どのような規制が及ぶのかについて整理しておく必要があります。
それでは、最初に説明した1つ目のポイントである下請法の適用対象者がどのように整理されているのかについて見ていきましょう。
これは2つ目のポイントとしてあげた適用対象取引の類型に応じて大きく2つの類型に分けられています。
1つ目の類型として、
物品の製造、
修理委託、
情報成果物作成委託のうちプログラムの作成、
役務提供委託のうち運送、
物品の倉庫における保管、
情報処理
については
資本金が3億円超の会社が業務委託をする場合には、資本金3億円以下の会社や個人事業主が下請事業者に該当する。
資本金が1000万円超の会社が業務委託をする場合には、資本金1千万円以下の会社と個人事業主が下請事業者に該当する。
とされています。
たとえば皆さんの会社が資本金3千万円の場合には資本金1千万円以下の会社や個人事業主と上の内容での業務委託取引をする場合には、下請法の対象になります。
このように、下請法は、①資本金の額の関係と②取引内容、この2つに着目して下請法の対象となるかどうかを判断するということを意識してください。
2つ目の類型として、
プログラム作成以外の情報成果物作成委託、
運送・物品の倉庫における保管や情報処理以外の役務提供
という1つ目の類型に当たらない委託業務を依頼する場合には、
資本金5千万円超の会社が業務委託をする場合には、資本金5千万円以下の会社や個人事業主が下請事業者に該当する
資本金が1千万円超の会社が業務委託をする場合には、資本金1千万円以下の会社や個人事業主が下請事業者に該当する
とされています。
下請法の主な規制
では、上で説明した資本金の関係と取引内容の関係で、下請法が適用される場合にどのような規制が課されるのでしょうか。
下請法上の義務と禁止事項を説明していきます。
まず、下請法の主な義務として
①発注書面の交付義務
②支払期日を役務提供の日から60日以内にする義務
③ ②の支払い期日に遅れた場合、遅延損害金を14.6%払わないといけない
というものがあります。
①の発注書面については、下請法第3条に基づく書面であるため、3条書面と呼ばれることもあります。
この発注書面については、
・発注者と受注者の名称
・発注日
・委託内容
・納品日
・納品場所
・検査完了日
・下請代金の金額
・下請代金の支払期日
などを記載しなければならないものとされています。
②の支払期日について、役務提供の日から60日以内としなければなりませんが、よく見落としがちなものとして、
支払期日を月末締め、翌々月払いとしておくと、
例えば3月1日に納品されたものについて、3月末日に締めて、3月の翌々月の5月31日に代金を支払うことになります。そうすると納品の日から約90日後に支払うこととなりますので、下請法上違法な行為ということになってしまいます。
また③の遅延損害金についても、契約書の中で遅延損害金を民法所定の3%と定めていたりすることもありますので、この場合も厳密には下請法違反の契約書ということになりかねないため、下請法に配慮した契約書では、遅延損害金は3%とする、の後に、括弧書きなどで、「ただし、受託者が下請法上の下請事業者にあたる場合には遅延損害金を14.6%とする。」という条項が入っている場合もあります。
下請法の禁止行為の概略
次に下請法上の禁止行為ですが、
代金の減額や買いたたきの禁止
正当な理由のない受容の拒否
割引困難な手形の交付
自社製品の購入や利用の強制などが禁止されています。
主なものについては後で別途説明いたします。
下請法のよくある誤解
そして下請法の注意点としてよくある誤解も記載しておきます。
それは、仮に下請事業者が合意をしていたとしても、違法になることがあるということです。なぜ合意があってもダメなのかというと、下請法はもともと力関係の差が大きい親事業者と下請事業者の関係性に注目して下請事業者を守ろうという発想の法律です。
ですので、親事業者の言いなりになって合意を押し付けられる可能性があるということを考慮して、合意があってもだめな場合があるということになっています。
例えば、振込手数料の負担やボリュームディスカウント、いわゆるリベートのようなものについては、事前の合意があれば可能となっていますが、事後的には合意があってもできません。また支払期日を60日よりも遅くする定めは事前の合意があってもできません。
そして、こういった下請法の義務に反すると違反の事実を公表される恐れもありますので、マニュアル等を作成して担当部署に周知するということが必要となります。
下請法の適用関係の詳しい説明
では改めて、下請法の細かい部分を説明していきます。
まず、取引の内容と資本金の関係、この2つで下請法が適用されるかが決まるということを説明しました。
これに関するチェックポイントを1つずつ見ていきます。
先ほど説明した内容の繰り返しですが、
①物品の製造
②物品の修理
③プログラムの作成、
④運送物品の倉庫保管
については、資本金が3億円超の会社の場合、ここで「超」という言い方をしていますが、これは3億円を超える場合という意味です。
ですので、資本金が3億円ぴったりの場合には資本金が1千万円超3億円以下の会社として、資本金が1千万円以下の会社と個人事業主が下請事業者に該当することになります。
一方で、3億円を超える資本金の会社の場合、すなわち、資本金が3億1円以上の場合には、資本金が3億円以下の会社や個人事業主が下請事業者にあたることになります。
繰り返しになりますが、下請法は取引の内容と委託者と受託者の資本金の関係、この2つが下請法の対象となるかどうかのポイントです。ですので、仮に業務を委託する場合には、自社の資本金に応じて受託先が下請事業者に該当するかどうか資本金の金額をよく確認しておく必要があります。
あと、これは法律には規定がないのですが、親子会社の取引について、公正取引委員会は親会社が議決権の50%超を所有する子会社などの場合は運用上問題にしないという方針を明らかにしていますので、この点も覚えておくといいです。
もう1つの類型は、上であげた取引に当たらない場合というもので、例えば、放送番組や広告の制作、商品デザイン、製品の取扱説明書、設計図面等の作成といったプログラム作成以外の情報成果物の作成や
ビルや機械のメンテナンス、コールセンター業務等の顧客サービス代行といった運送・物品の倉庫保管、情報処理以外の役務提供、こういった取引については、資本金の基準が変わるということになっています。
具体的には資本金が5千万円超の会社の場合には、資本金が5千万円以下の会社や個人事業主が、
資本金が1千万円超の会社の場合には、資本金が1千万円以下の会社や個人事業主が下請事業者にあたることになっています。
上のページを見ていただくと、対象となる取引にどのようなものがあるかということのイメージがつきやすいと思います。よく誤解が生じやすいものとして、OEM生産のようなものについても自社のロゴマークをつけるという点が業務委託に当たりますので、単なる売買契約とは異なり、下請法対象ということになります。そういったことに気をつけながら、挙げている取引例を参考にしていただきたいと思います。
製造委託について
次のページは製造委託についての説明で、こういったものが製造委託にあたるという例を4つほど挙げています。
1つ目が物品の販売を行っている事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合というもので、具体的には、
自動車メーカーが自動車の部品の製造を部品メーカーに委託する場合などがあります。
2つ目が、物品の製造を請け負っている事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合というもので、具体的には、
精密機器メーカーが、受注生産する精密機械に用いる部品の製造を部品メーカーに委託する場合などがあります。
3つ目が、物品の修理を行っている事業者がその物品の修理に必要な部品又は原材料の製造を他の事業者に委託する場合というもので、具体的には、
家電メーカーが、販売した製品の修理用部品の製造を部品メーカーに委託する場合などがあります。
最後の4つ目が、自社で使用・消費する物品を社内で製造している事業者が、その物品や部品などの製造を他の事業者に委託する場合で、具体的には、
製品運送用の梱包材を自社で製造している精密機器メーカーが、その梱包材の製造を資材メーカーに委託する場合などがあります。
修理委託について
次のページに来まして、修理委託については、修理を事業として行っている者が下請事業者に修理を委託する場合だけではなく、自社の物品について通常は自社で修理を行っているけれど、その一部について下請事業者に修理を委託する場合も、下請法対象になるという点が注意点です。
どういったものがあたるかというと、まず1つ目の修理を業として行っているというのは、たとえば、自動車のディーラーが自動車の所有者から依頼された修理を板金業者に委託したり、冷蔵庫の購入者が家電量販店に修理を頼んで、家電量販店が地域の電気屋さんに委託する、という場合があります。
一方で、2つ目の自社で使用している物品の修理というのは、たとえば、精密機器メーカーが、測定の機械を通常はメンテナンスの専門部署が行っているけれど、その一部を他の業者に委託する場合などがあります。
情報成果物の作成について
情報成果物については、まずプログラムがどういったものなのかという事を意識した上で、プログラムの場合とそれ以外の委託の場合のそれぞれで資本金の関係が異なっていましたので、その関係を押さえておきましょう。
その上で、情報成果物作成委託にどのようなものがあるかですが、
まず、1つ目は情報成果物を業として提供している事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合というもので、
具体的には、
ソフトウェアメーカーがゲームソフトやアプリケーションソフトの開発をソフトウェアメーカーに委託する場合などがあります。
2つ目が、情報成果物の作成を業として請け負っている事業者が、その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合というもので、
具体的には、
広告会社が、クライアントから受注したCMの制作をCM制作会社に委託する場合などがあります。
最後3つ目が、自社で使用する情報成果物の作成を業として行っている場合に、その作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合というもので、
具体的には、
家電メーカーが内部のシステム部門で作成する自社用経理ソフトの作成の一部をソフトウェアメーカーに委託する場合などがあります。
役務提供について
役務提供についてはイメージしやすいと思いますが、
具体例とすると、
自動車メーカーが、販売した自動車の保証期間内のメンテナンス作業を自動車整備会社に委託する場合などがあります。
役務提供について1つ注意点としては建設業に関する下請けは、下請法の対象ではなく、建設業法が適用されることがあります。
また、自社が事業として行っている行為を下請事業者に委託する場合ではなく、自社のために行っている業務を委託する場合には下請法の対象にはなりません。
例えば、運送業務を行っている会社が配送の委託を受けた場合で、梱包については、お客様から依頼されていないが、配送を行うためには梱包を行うことが必要であるため、これを梱包する事業者に依頼する場合などは、下請法の対象にならないこととなります。
下請法の禁止事項
次からは下請法が適用される場合にどういったことが禁止されるのかについて話していきたいと思います。
書いたたき
まず最初に買いたたきについてお話しします。
買いたたきとは、下請代金の額を決定する際に、通常支払われる対価と比べて著しく低い金額を不当に定めることを指します。
事前に不当に低い対価を定めるという点が後で説明する減額と異なり、減額はあらかじめ定められた金額から対価を減額させようとすることを指します。
どちらも下請法上の禁止行為ですが、買いたたきと減額ではその定義が違いますので、両者を比較しながら覚えておいてください。
まず、通常支払われる対価とは何かということですが、
① 同じような取引の給付の内容(又は役務の提供)について、その下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(通常の対価)
② 通常の対価の把握が困難な場合は、例えば、その給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には、従前の給付に係る単価で計算された対価を通常支払われる対価として取り扱うもの
とされています。
そして、この通常支払われる対価より著しく低いかどうかについては、
① 著しく低いかどうかという価格水準
② 不当に定めていないかどうかという下請代金の額の決定方法や対価が差別的であるかどうか
等の決定内容で当不当を総合的に判断されます。
買いたたきに当たるかどうかは、「著しく低い」金額を定めるかどうかという曖昧な概念が使用されていますので、判断が難しいのですが、下請代金の決定の際に下請事業者と十分な協議をしたかというプロセス面の話も検討事項の1つになっていますので、その点も意識しておいてください。
減額について
次に減額についてですが、これはあらかじめ代金を定めていたにもかかわらず、この代金を減額するよう求めることを指します。ここに7つほど例を挙げていますが、キャンペーン目的で代金を変えないけど納品数を増加させて実質的に値下げをさせたり、単価を改定したけど、改定前に発注されたものについても遡及して適用させたり、振り込み代金を合意なく負担させたり、消費税を払わない等の行為が減額に当たります。
① 単価の引下げ要求に応じない下請事業者に対して、あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又は一定額を減額すること
② 「製品を安価で受注した」又は「販売拡大のために協力してほしい」などの理由で、あらかじめ定められた下請代金から一定の割合又は一定額を減額すること
③ 販売拡大と新規販売ルートの獲得を目的としたキャンペーンの実施に際し、下請業者に対して、下請代金の総額はそのままにして、現品を添付させて納入数量を増加させることにより、下請代金を減額すること
④ 下請事業者との間に単価の引下げについて合意が成立し単価改定されたが、その合意前に既に発注されているものにまで新単価を遡及して適用すること
⑤ 手形払を下請事業者の希望により一時的に現金払にした場合に、その事務手数料として、下請代金の額から自社の短期調達金利相当額を超える額を減ずること
⑥ 下請事業者と合意することなく、下請代金を銀行口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させ、下請代金の額から差し引くこと
⑦ 消費税・地方消費税額相当分を支払わないこと
下請代金の遅延防止について
次に下請代金の支払い遅延についてですが、これは物品等を受け取った日から60日以内に代金を支払わなければいけないとなっています。この60日というのは、実務的には2ヶ月を指すとしていますので、31日の月が2ヶ月続いたとしても、例えば7月1日に納品されたものを、8月31日支払ったという場合であっても、7月と8月と31日ずつあって、61日後に支払ったとして支払い遅延に当たるということはないとされています。
ですので、当月末締め翌月末払い、とすると2か月以内で支払えて60日以内の期日を守れる、ということになります。
その他の禁止行為
その他の禁止行為としては、正当な理由がないのに、納品した商品を受領しないもしくは不当に返品するといったものや購入する必要がないのに、自社が指定する商品やサービスを購入させる。また、物品を製造する際に原材料等を親事業者が指定して、親事業者から購入させている場合に、その原材料の対価の支払い期日を下請事業者への対価の支払い期日より早く設定して下請事業者の利益を害する、資金繰りを悪くさせるような行為についても禁止されています。
他にも割引困難な手形を交付したり、不当な経済上の利益を要請したりといったことも禁止されています。
以上の通り下請法について説明をしてきましたが、まず下請法が適用される取引行為を行っているのかどうか、そして親事業者と下請事業者の資本金の関係がどのようになってるこの辺を確認した上で、実際にどのようなことが気にされるのか、どのような書類を出さないといけないのかこのような点に、注意してようにしてください。
私どもの法律事務所では、このコラムで記載した内容を動画にまとめ、顧問先企業の研修用に配布しているほか、下請法で定められた事項を記載した発注書面等の雛形についてもお渡しして、下請法違反とならないよう、サポートを心がけております。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。