6月になりました(2024年6月に執筆しています。)。
日本では3月決算の会社が多いため、その3か月後である6月に株主総会が集中する傾向があります。
今回は株主総会と弁護士の関わりについてコラムを記載します。
株主提案に対する対応
2024年は6月に株主総会を開催する上場企業のうち、株主提案を受けた会社が91社で、3年連続過去最多を更新していると日本経済新聞が報じています。
株主提案がなされた場合の対応としては、
- 株主提案が会社法の要件を満たした適法なものかどうかの検討
- 株主提案を議案とする場合の会社の意見の記載の検討
- 実際の株主総会の場での提案株主対応
が必要となります。
株主提案をできる株主の資格として
ⅰ 議決権の1%以上または300個以上を(定款で引き下げ可能)
ⅱ 6か月以上有すること
が必要で、株主総会の日の8週間前までに提案をしなければなりません。
また、提案内容も会社法上認められたものしかできません。
そのような要件、特に会社法上問題のない議案かどうかについての検討については、弁護士の法的な視点からの確認が必要となることがあります。
また、株主提案として適切になされていた場合には、株主総会の招集通知に会社の意見を記載し、一般的には、株主提案に反対する意見を記載することが多いですが、その内容についても弁護士が法的な視点からアドバイスをします。
そして、株主総会の日において提案株主に提案の理由の説明について時間を与えますが、その際の運用が適切であったか、当日株主総会に参加した弁護士も確認をしています。
招集通知の内容の確認
株主提案のようなイレギュラーなイベントがなかった場合でも株主に送付する招集通知の内容に不備がないかという点は極めて大切な確認事項ですので株主総会の担当者のみならず、弁護士もチェックを手伝います。
法定の事項について正しく記載がなされているか、議案の内容について適切に記載がなされているか、場合によっては取締役の選任議案など議案に漏れがないか念のため登記事項証明書で役員の任期を確認したり、ということもあります。
想定問答の確認
株主からの質問に対しては、想定される質問とそれに対する回答を準備をしておきます。その回答内容について問題がないか、より適切な回答がないか、についても弁護士の視点で確認を行います。また、地域紛争の発生、ESG対応、円安の影響など、近時のトピックに対する想定問答が準備されているかという点についても目を配らせています。
リハーサル・本番対応
そして、株主総会のリハーサルでは、役員の入退場から事業報告、質問対応、議案の採決まで一連の流れに問題がないかを確認し、気になった点をフィードバックした上で株主総会本番に備えます。
株主総会本番では、リハーサルでの動きも意識しながら問題なく進行できているかどうか確認をしながら、株主から動議が出た場合の対応、たとえば議長交代の要請が出た場合にどうすべきか、議案の採決中に議案の修正要求が出た場合にどうすべきか、などにも留意をしておきます。
株主総会が終了した場合には、議事録の確認を行い、株主総会に関する一連の対応は終了します。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。
2023年12月1日に日本M&Aセンターとの共催で株式上場に関するセミナーをいたしました。その際の内容を改めてコラムにまとめてみたいと思います。
株式上場支援のバックボーンについて
まず、私が所属する如水法律事務所は、如水グループの一員として活動する法律事務所であり、如水グループは、監査法人、税理士法人及び社会保険労務士法人を有する専門家士業の集まりです。
上場会社の監査においては、上場会社等監査人名簿に登録が認められている監査法人を選定することが必要となりますが、この上場会社等監査人名簿に登録されている監査法人のうち、福岡県内に本拠地を置いている監査法人は、如水グループの如水監査法人だけです。
また、如水法律事務所や如水税理士法人、如水社会保険労務士法人もそれぞれの専門分野で上場会社や上場を目指す会社の支援を行っております。
私も、証券会社の公開引受部で上場支援を行っていた経験もあり、最近では、上場会社や上場を目指す企業の社外役員も務めているため、その経験も活かしながら法的な支援を中心に株式上場支援を行っております。
上場準備における弁護士のサポートとスケジュール
株式上場で弁護士がサポートする場面としては、
① 顧問弁護士として日々の契約業務や議事録作成等のサポート
② 社外役員として取締役会や他の委員会での活動
③ 株式上場に向けた法務DDの実施
が主なものとして挙げられます。
まず、①の顧問弁護士としての活動については、上場を目指す会社では契約書のチェック体制の整備、取締役会や株主総会議事録の整備、新たなビジネスモデルの適法性のチェック、コンプライアンス体制の確立などのサポートをしています。
特に、コンプライアンス体制の確立については、どの程度の体制確立が必要かという株式上場の肌感覚も重要になりますので、日常的な相談をしている弁護士と別に、株式上場に向けた支援をする弁護士も顧問弁護士につけるということもあります。
場合によっては、証券会社などの要望で、会社が抱える特定の法的問題に関する意見書を作成する必要もありますが、その際には、意見書によって証券会社等の懸念事項が払しょくされるのかどうか、証券会社等の問題意識、会社の対応状況、法的評価などを適切に記載する必要があります。
次に、②の社外役員についてですが、コーポレートガバナンス・コードの中でも、会計士や弁護士といった専門家を社外役員として入れることの重要性が記載されており、実際にも法的な観点からの監督を行うという趣旨で弁護士を社外役員(取締役又は監査役)として入れている会社が増えてきています。
社外役員としての活動は取締役会(や監査役会)での発言が主ですが、会社によっては、任意にリスクガバナンス委員会や報酬委員会、関連当事者取引委員会など各社の課題に応じた委員会を設定することもあり、その中での問題点の指摘というのも弁護士の役割として重要になっています。
最後に③の株式上場に向けた法務DDでは、
ビジネスモデルが適法か、
株式の発行や譲渡などが適切に行われているのか、
契約管理体制や契約内容に問題がないか
下請法などの業法違反がないか、違反を防止する体制が整っているか、
などについて確認を行い、その報告を行います。
場合によっては、指摘された課題の解決に向けた取り組みについて、そのままサポートするということもあります。
それぞれのサポート内容について弁護士が関与する時期によって若干のタイミングは異なりますが、主には上場申請を行う2期前くらいに関与するケースが多いかと思います。
まず、①の顧問弁護士はどのタイミングにおいてもつけることはできますが、通常は申請を行う2期前くらいからコンプライアンス体制や議事録の整備などに注意をしていきますので、同じタイミングで適切な顧問弁護士を探すケースが多いです。
次に、②の社外役員については、2期前から社外の役員を入れて、会社へのけん制機能を高めていき、1期前には社外役員の割合を増やして、さらにけん制機能を高めていく、というのが一般的ですので、上場申請の1期ないし2期前というタイミングでサポートをすることになります。
最後に③の株式上場に向けた法務DDは、主幹事証券会社の依頼で、法務DDを行い、法務上の課題を洗い出すということがあり、通常は上場申請の2期前に行って、期中に改善を行い、申請の1期前に改善した状態で運用を行い、申請期に臨む、というのが理想的なスケジュールです。
上場準備会社が実際につまずきやすいポイント
上場準備会社がつまずきやすいポイントとしては、まず、業法への注意が不十分になっていることが挙げられます。
たとえば、下請法については、そもそも下請法が適用される取引相手がだれかという点が把握できていないということも多くみられますし、下請法に適した契約書など書面の作成がなされていないこともあります。
また、法改正に合わせた規程の改定がなされていないということもよくありますし、取締役会議事録において、利益相反取引について、当該利害関係を有する取締役が審議と決議から外れた内容の議事録が作成されていないということもよくあります。
そういったことが起きないように、日ごろから議事録の作成も含めて弁護士がサポートするということが重要ですし、仮に、そういった問題が起きた場合に、どのように問題点を治癒すればいいのか、ということについてのサポートも弁護士の重要な仕事の1つです。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。