2024.10.25.Fri
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令和5年景品表示法改正(令和6年10月施行)②確約手続以外について
1 課徴金制度における返金方法の弹力化
改正前景表法10条および11条は、課徴金納付命令の通知を受けた事業者が実施予定返金措置計画の認定を受けて一般消費者への金銭による返金措置を実施した場合、返金した額を課徴金の額から減額することを定めています。
この返金措置は、課徴金制度の導入以来これまでの利用がわずか数件にとどまっています。そして、その理由として、返金を実施するために銀行口座情報を購入者から取得しなければならないことや、振込手数料が割高であることなどが指摘されていました。
そこで、改正景表法では、金銭以外の支払手段として第三者型前払式支払手段 (いわゆる電子マネー等)を利用することが認められました。
2 課徴金額の推計規定の新設
改正景表法8条4項は、事業者が課徴金の計算の基礎となるべき事実を報告しないとは、内閣府令で定める合理的な方法により売上額を推計して、課徴金の納付を命ずることができることとしました。
課徴金の額は、課徴金の対象となる不当表示をした期間(最大3 年)の売上額が計算の基礎となりますが、商品の売上データを適切に管理していない事業者については課徴金の基礎となる売上額が把握できないために課徴金を課すことができませんでした。しかし、そうすると、ずさんな管理をしていた事業者がかえって得をするという不都合が生じていたため、この推計規定が導入されました。
この「合理的な方法」とは、 課徴金対象期間のうち課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握した期間における1日当たりの売上額に、課徴金対象期間の日数を乗ずる方法とされています (改正景表法施行規則8条の2)。
したがって、この改正によってもまったく売上額が把握できない事業者につい ては、売上額を推計することはできないこととなります。
ただし、いかに管理がずさんな事業者であっても、まったく売上額を把握できないことはまれと考えられますので、この制度の導入により、これまでは課徴金対象期間全期間分の課徴金を課すことができなかった(あるいは把握できた売上額が5,000万 円に満たないためにまったく課徴金を課すことができなかった) 事例の多くについて課徴金を課すことができるようになるものと考えられます。
これを事業者サイドから見てみると、たとえば、売上が伸びてきた直近1年分の売上だけ把握しているようなケースにおいては、その3年分を基準として課徴金が計算されると、本来支払うべき課徴金よりも高額の課徴金を課されることになります。
このような不利益を避けるためには、商品の売上額を適切に把握・管理しておく必要があります。
3 再違反事業者に対する課徴金の割増し規定の新設
基準日から遡って、10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対する課徴金の割合を3%から4.5%に割増しする規定が新設されました (改正景表法8条5項)。
基準日は、報告徴収等、合理的根拠の提出要求、弁明の機会の付与のいずれかが行われた日のうち最も早い日とされています(改正景表法8条6項)。
なお、事業者が過去に課徴金納付命令を受けた者かどうかが問題とされるため、同一の商品・役務でなくても、この規定は適用されます。
4 不当表示に対する直接の刑事罰の新設
優良誤認表示と有利誤認表示に対する直接の刑事罰の規定が新設され、これらの不当表 示をした個人に対して100万円以下の罰金が科せられるほか(改正景表法48条)、法人にも 100万円以下の罰金が科せられることとなりました(改正景表法49条1項2号)。
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