2024.7.25.Thu
- 不動産問題
賃貸借契約の解除(不動産の法務②)
賃貸借契約の解除の可否
Q 当社が所有している物件についてAに賃貸借をしていますが、最近賃料を滞納しています。前にも賃料を滞納したことがあり、契約書にも賃料を滞納した場合には解約できると記載しているため、賃貸借契約を解除しても問題ないでしょうか。
A 賃料の滞納があっても「信頼関係の破壊」が認められないと賃貸借契約の解除は認められません。
賃貸借期間中にテナントからの賃料が滞ることはよく起こりうるものです。最近では、居住用住居のみならず、商業用のテナントについても家賃債務保証会社と契約を行い、賃料が滞納されても家賃債務保証会社から支払いを受けるということも増えていますが、まだまだ居住用に比べると浸透度が低いのが現状です。
賃料滞納が数か月分積み重ならないようにこまめに賃借人と連絡を取りながら回収をしていくのが重要ですし、万一賃料の支払いを受けられなくなった場合に敷金でカバーできる範囲なのか確認しておくことも必要です。特に、テナントの場合は原状回復費用がかさむことが多いので賃料の滞納だけでなく、原状回復費用もカバーできるのかは重要な確認事項です。
では、テナントが賃料を滞納した場合に、賃貸借契約の解除は認められるのでしょうか。
賃料の支払いは賃貸借契約の重要な約束事ですし、賃貸借契約書でも賃料の支払いを怠ると解除できるとしていることが通常ですので、解除は認められそうにも思われます。
しかし、賃貸借契約は継続的な関係に基づくものであり、裁判例上、こうした契約については「信頼関係の破壊」がないと契約の解除はできないとされています。
一般的には、賃料を1~2か月程度滞納しただけでは信頼関係を破壊したとはいえないとされることが多く、3か月以上の滞納が目安とされています。
テナント(賃借人)が破産した場合の賃貸借契約の解除の可否
また、テナント(賃借人)が破産した場合は賃貸借契約の解除は認められるのかという相談もあります。
賃貸借契約の中には、賃借人が破産手続開始の申し立てをした場合や開始決定がなされた場合を解除事由としていることがよく見られますが、これは賃借人にとって不利なものとして裁判例上無効とされています。
一方で、破産にいたる会社は賃料を滞納していることもよくありますが、上で述べたように3か月程度の滞納があって、信頼関係が破壊されているとされれば、賃貸借契約の解除は可能です。
テナントが破産し、賃料の滞納状況から判断して賃貸借契約の解除が困難という場合には、賃貸人は破産した会社の判断を待つ必要がありますが、破産手続きが開始すると裁判所から破産管財人という者が弁護士の中から選任され、この破産管財人が賃貸借契約を解除するか、継続するかを決定することとなります。
破産管財人が賃貸借契約を継続すると決めた場合賃料がどうなるかということを疑問に感じられると思いますが、開始決定後の賃料については優先的に支払いを受けられる債権とされます。一方で、破産開始決定が出る前までの賃料については、このような優先的な支払いを受けられず、破産債権として届出を行うこととなりますが一般的にはかなり低い配当率での配当を受けるのみです。
ただし、敷金がある場合には、未払賃料を敷金から相殺することはできます。
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