2024.7.5.Fri
当番弁護・国選弁護
弁護士の業務の中に、当番弁護・国選弁護というものがあります。
ふだんは企業に関するコラムが多いですが、今回はこの当番弁護や国選弁護について書きたいと思います。
当番弁護とは刑事事件で逮捕された被疑者(犯罪の嫌疑をかけられていて、起訴される前の者)に対して、弁護士が無料で接見する制度です。
一方、国選弁護とは、逮捕の後の身柄拘束手続きである勾留された被疑者や起訴された後の被告人のうち、経済的理由で私選弁護人を選任できない者に対して、国費で弁護人を選任する制度です。
福岡県弁護士会では、当番弁護や国選弁護に登録している弁護士をリスト化して、日にちごとに複数名割り振って担当を決めています。
私どもの事務所では、取り扱う事件は企業に関わる案件がほとんどですが、所属する弁護士(と言ってもまだ2名しかいませんが)全員が当番弁護・国選弁護を行っています。
その理由は以下の3つです。
1つ目は、公益活動の一環としてです。
弁護士には基本的人権の擁護と社会正義の実現という責務が課されています。その活動の代表的なものが当番弁護や国選弁護です。特に、福岡県弁護士会は当番弁護士制度を日本で初めて始めた弁護士会として力を入れています。こうした公益活動に事務所として少しでも貢献できればという思いが当番弁護や国選弁護を行う理由の1つ目です。
2つ目は若手の育成です。
私たちの事務所では、通常の事件処理はチームで対応しているため若手の弁護士が自分一人の判断で対応するという機会はほぼありません(自身で考えて対応する場合でも最終的には上の弁護士の判断を仰ぎます。)。
一方、当番弁護や国選弁護は弁護士個人が選任されるため、たとえ上の弁護士に相談するにしても、最終的には自分の判断と責任で対応しなければいけません。このような対応をすることで、弁護士として責任をもって事件に向き合う力が育成され、普段の業務に取り組む意識も向上すると考えています。
そして、若手の弁護士に登録してもらう以上、私が登録していないと偉そうなことがいえないので、私も弁護士登録から15年以上経過していますが、登録を続けています(福岡では大ベテランの先生でも国選弁護にずっと登録されている先生も多くいらっしゃいますので、15年程度の登録でもう十分やったので、ともなかなか言えないくらい熱心な先生が多い弁護士会でもあります。)。
3つめは企業の幅広いニーズに対応するためです。
普段は企業の契約書の相談や債権回収の相談、労務問題の対応に当たっていたとしても、従業員が交通事故を起こして刑事事件になるなど、広い意味で会社が刑事事件に巻き込まれることがあります。地方の企業では、社長が従業員を心配して従業員の刑事弁護を依頼したり、そうでなくても、刑事事件がどのように進行するのかを質問してくることがあります。こういった場合に対応できるようにするためにも普段から刑事事件に触れておく必要があります。
福岡で顧問弁護士を探している、企業法務について相談できる弁護士を探しているという方はこちらもご覧いただけますと幸いです。