2024.3.5.Tue
- 契約書
- 業務委託契約
契約書の読み方②(業務委託契約)その1
今回はNDA(秘密保持契約書)に続いて、2回目の契約書の読み方に関する説明のその1です。
今回取り上げる業務委託契約書も、契約書チェックをする際によく見る契約です。
業務委託契約の法的性質
まず、法的な位置づけとして、業務委託契約は、準委任又は請負もしくはその中間的な契約として位置づけられています。
民法では、準委任契約では、委託者が「事務を処理すること」を受託者に委託し、受託者がこれを承諾することによって効力が生じます(民法643条、656条)。
一方、請負契約では、受託者が「成果物を完成させること」を約し、委託者がその結果に対して報酬を支払うことを約することによって効力が生じます(民法632条)。
事務処理というプロセスに重点を置くか、成果物の完成という結果に重点を置くかによって準委任に近い契約なのか、請負に近い契約なのかという点が変わってきます。
まず、いずれの場合でもどのような業務を委託するのかを定めておく必要があります。
特に、業務内容をめぐる当事者間の認識の相違によってトラブルが生じることを防ぐため、どういった業務を委託するのか、具体的に定める必要があります。
このとき、委託者としては、依頼した業務を遂行するために必要となる雑多な仕事に関しても受託者に対処してもらえるよう、「その他委託業務に附帯関連する一切の業務」も業務内容として確認的に定めておくといいでしょう。
成果物の完成義務
上で説明したとおり、プロセスと結果のどちらに重点を置くかによって準委任に近いか、請負に近いかが変わってきます。
そして、結果に重点を置く場合には、委託者としては、成果物が契約の内容に適合しなかった場合に受託者に対して責任を追及できるよう、「受託者は成果物を完成させる義務を負う」と定めるとよいでしょう。
一方、受託者としては、成果物を完成させることができるかどうかが分からない場合は、「受託者は、成果物の完成義務を負わない」と定めるとよいですが、このような条項があると完成義務を負う内容への修正の要望が生じることも多いです。
法令等の遵守義務
また、委託者としては、委託者が遵守すべき法定等の規則を受託者にも遵守させた上で業務を遂行させることができるよう、「受託者は、本委託業務の遂行に関して委託者に適用される法令等の規則を遵守しなければならない。」と定めることがあります。
一方、受託者としても、法令遵守はある意味当然の義務とはいえますが、業務を遂行するにあたって、どのような規則を守る必要があるのかを明確にするために、
「委託者は、本委託業務の遂行に関して委託者に適用される法令等の規則の内容を通知しなければならない」と定めることもあります。
⑴ 民法の原則
委託料をめぐってトラブルにならないように、金額を明確に定める必要があります。
また、契約が途中で終了したときのトラブルを防ぐため、「委託料が履行割合に応じて発生するのかどうか」を定めておくとよいでしょう。
民法では、準委任契約でも請負契約でも、委託者の責任によらずに、契約が途中で終了したときは、委託者は履行割合、もしくは仕事の結果のうち可分な部分の給付によって受けた利益の割合に応じて、報酬を支払わなければなりません(民法656条、648条3項、648条の2第2項、634条)。
なお、これは、受託者の責任で契約が途中で終了したときも同様です。
一方、委託者の責任で契約が途中で終了したときは、委託者は報酬の全額を支払わなければなりません(同法536条2項)。
⑵ 委託者の帰責性によって契約が途中で終了したときの修正
上で述べたように、民法では、委託者の帰責性によって、契約が途中で終了したときは、委託者は報酬の全額を支払わなければなりません。
そのため、委託者に有利にする場合には、委託者の責任で契約が終了した場合でも、履行割合に応じて報酬を支払えば済むように、「委託者の帰責事由によって本契約が終了した場合、委託者は、履行割合を乗じた金額を受託者に支払う」と定めるとよいでしょう。
一方、受託者に有利にする場合には、自らに責任がない限りは報酬の全額を請求できるように、「受託者の帰責性によらずに契約が途中で終了したときは、委託料の全額を請求できる」と定めるとよいでしょう。
民法の規定通りとする場合は、「委託者の帰責事由によって、本契約が終了した場合、委託者は委託料の全額を支払う」と定めておきます。
⑶ 受託者の帰責性によって契約が途中で終了したときの修正
民法では、受託者の責任によって、契約が途中で終了したときであっても、委託者は履行割合、もしくは仕事の結果のうち可分な部分の給付によって受けた利益の割合に応じて、報酬を支払わなければなりません。
委託者としては、受託者の帰責性によって契約が途中で終了した時は、報酬を支払わなくても良いように、「受託者の帰責性によって契約が途中で終了したときは、委託料は発生しない」と定めるとよいでしょう。
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