2024.6.10.Mon
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- 執筆者名 : 吉井
ステルスマーケティングと景品表示法
1.はじめに
本年6月7日、ステルスマーケティング告示における違反行為に該当するということで初摘発があったとの報道がありました(※1)。措置命令の内容については、消費者庁のウェブサイトに詳しいですが(※2)、インフルエンザワクチン接種のために来た患者に対し、インフルワクチン接種費用を割り引くことを条件に、Googleマップ上のクリニックのプロフィールにおける口コミ投稿欄に星5または星4の投稿をすることを求めた事案のようです。
同クリニックのGoogleマップ上の口コミを確認してみましたが、かなりの口コミが投稿され、低評価の投稿も多いようで、上記のステマが行われて総合評価が3.0であることを考えると、クリニック自身、低評価の口コミに相当に悩んでいたということがあったのかもしれません。
2.ステマ告示概要
それはさておき、令和5年10月1日から、令和5年3月28日内閣府告示第19号(いわゆるステマ告示)が施行され、ステルスマーケティングは景品表示法違反となっています。なお、ステルスマーケティング規制の概要については、昨年8月25日の当事務所オンラインセミナー「景品表示法におけるステルスマーケティング規制と企業での対応について」にてお話ししておりました。
同告示上、ステルスマーケティングとして景表法違反となる表示は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの 」とされていますが、その解釈に関しては、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(※3)において記載されています。
報道されている事案の場合、問題となるものとしては、「事業者が第三者をして行わせる表示」への該当性、すなわち、「事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合」にあたるかどうかということになります。まず、この事案では、運用基準でいう「事業者が第三者に対して当該第三者のSNS(ソーシャルネットワーキング サービス)上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合」にストレートに当たります。もっとも、第三者の樹異種的な意思による表示内容と認められる場合には除外されますが、それは、表示内容の依頼・指示、対価提供関係など、事業者が表示内容を決定できる程度の関係性があるか否かにより判断されることになります。
3.本件事案との関係
なお、本事案では、星4といった具体的な依頼があったケースですが、明示的な依頼・指示がなくても、「事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、 事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない 関係性がある場合」には、これも事業者の表示とされます。
このように、本事案のような具体的な依頼がない場合であっても、告示違反となり得、告示違反の範囲は想像より広いことが多いため、ご注意いただければと存じます。
また、本件のような第三者に依頼して高評価を投稿する場合だけでなく、従業員や業者に依頼して高評価をつける行為、ライバル業者の口コミに、自社のサービスと比較した低評価をつけさせる行為なども違反となります。
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※1 時事ドットコム「ステマで初の行政処分 医療法人、マップに星依頼―消費者庁」等
※2 消費者庁「医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について」
※3 消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準