2024.3.8.Fri
- Fintech
- 執筆者名 : 吉井
合同会社型DAOと金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)について
金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)(定義府令改正案)のパブリックコメントが終了しました(金融庁ウェブサイト)。こちらは、今後、所要の手続を経て交付、施行の予定です。
この定義府令改正案は、いわゆる合同会社型のDAO(※1)の勧誘を一定の条件を満たすものについて、行いやすくするものです(※2)。
条件としての2号イロの内容は以下のとおりです。
イ 当該財産的価値を業務を執行する社員以外の者に取得させ、又は移転することができないようにする技術的措置がとられていること
ロ 当該財産的価値に表示される権利を有するものがその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は業務に係る財産の分配を受けることがないこと
これを受けて、金融商品取引法等ガイドライン案(金融庁ウェブサイト)では、ロに関し、いくつか留意点を記載しています。すなわち、
・ 社員権に付帯して物品やサービスその他経済的に評価できるものを提供することにより実質的に出資額を超える収益の配当又は財産の分配を行うような場合はロを満たさない。
・ 社員権トークンとは別のトークン(別トークン)を発行する場合に、実体として別トークンがロの「収益の配当又は業務に係る財産の分配」に当たり、ロを満たさないことがある。(※3)
とされています。
この改正により上記イロを満たす場合に社員権たるトークンの勧誘を行うことができることとなり、DAOを組成する自由度が飛躍的に高まることが予想されます。
ただ、イロを満たしさえすれば合同会社型DAOでの勧誘がいかなる場合でも金商法上問題とならないというわけではなく、ガイドライン案ではその点にも言及しています。すなわち、
・「別トークン」に合同会社等に係る収益の配当又は財産の分配を受ける権利が付帯されている場合には、「別トークン」それ自体が集団投資スキーム持分に該当する可能性がある。
・トークン化された合同会社等の社員権につき値上がり益が生じる合理的な根拠がないにも関わらず値上がり益があることを殊更に協調して勧誘行為を行う場合は金商法第157条(不正行為の禁止)又は第158条(風説の流布、偽計等の禁止)の違反となり得る
ということです。
いずれにせよ、合名会社型DAOの発行を自身の判断のみで進めることは危険であり、立ち上げる前の専門家への相談は必須となると思われます。
※1 DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自立組織)は、経営者による中央集権的な運営とは異なり、各メンバーに意思決定が委ねられ、自律的に運営される組織で、EthereumのDAOのサイトでは、共通の目的のために集団が共同で所有し、ブロックチェーンで管理された組織とされています(EthereumDAOウェブサイト)。DAOでは、運営方針の決定にガバナンストークンによる投票で行われ、投票されたトークン量に基づいて多数決で決定されます。
※2 具体的には、合名会社若しくは合資会社の社員権(政令で定めるものに限る。)又は合同会社の社員権が財産的価値に表示される場合で、その財産的価値が同令2号イロの要件を満たす場合に、電子記録移転権利から除き、かつ、金融商品取引業となる募集又は私募に係る有価証券から除くものです。
※3 ロを満たす例として、
・ 合同会社等の社員の地位と明確に区別されて発行される場合(「別トークン」の対価の支払が合同会社等の社員としての出資とは明確に区別されている場合等)
・ 職務執行の対価として発行される場合(職務執行の対価としての実態を伴うものであり、その発行される「別トークン」の内容が出資額又は事業収益に連動しない場合に限る。)
・ 社員以外の者も広く購入できる場合であって、社員と同じ条件で発行される場合
ロを満たさない例として、「別トークン」に合同会社等に係る収益の配当又は財産の分配を受ける権利が付帯されている場合にあっては、実態としてその収益の配当又は財産の分配がトークン化された合同会社等の社員権に係る収益の配当又は財産の分配に該当するのであれば、その収益の配当又は財産の分配を含め、出資額を超える収益の配当又は財産の分配を行う場合